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Novel stage / Fun Fiction:QМА
《Piano Sonata No.2 Op.35 Third Movement》 Francis*Serious
森に生じた筋は洞窟の入口より僅かに上、小高い丘の半ばほどから天へと突き刺さっている。膨れ上がる慟哭は切れ目からあふれ、小川の縁まで辿り着いた教師にも聞こえた。
「なんという深い悲しみだ……」
洞窟からも黒く重い煙のようなものが立ち上り、切れ目の発生源も丘より更に下へ続いている。
フランシスは意を決して、闇の中へと足を踏み入れようとした。
しかし、その前に洞窟の入口に人影が立つ。奥から出てきたのはアカデミーの制服を着た少年だった。
「セリオス、怪我はないかい」
小川を渡ってきた生徒へフランシスが声をかけた。俯き気味だった顔が上がる。
さらりと流れる白い髪の隙間から覗く瞳は澄んだ緑玉ではなく、黒く濁った紅玉の色。
「私の名は、イモータル。緑の都を守り、治める者」
セリオスの声で、セリオスのものではない言葉が紡がれる。
「どこの者かは知らぬが、この地に我が民以外の者が足を踏み入れることは許さぬ!」
少年の背後の闇がざわり、と動きだした。
「く……セリオスっ!」
手を伸ばすが、直に教師はたたらを踏む。
黒い筋から溢れ出た闇の濁流が大人三人で両手を広げたほどの胴回りを持つ蛇の形態を取り、フランシスの前に立っていた少年を頭上に掬い上げた。更にその身体は伸びて、側にある丘と同じくらいの大きさとなる。
ぎろり、と蛇の濁った紅玉の瞳が地上を睨みつける。瞳が向く先は少し離れた森の中。
……生徒達の集合場所。
「まだ力が足りぬ……あの者達も喰らうとしよう」
少年が呟くと同時に蛇が呼応して森を進もうとする。が、その歩みはすぐ目の前に落とされた雷によって阻止された。
「古の王といってもなってないな。この私を無視しようとは」
発動したのはその足元にいたフランシス。手の指揮棒が振り上げられていた。
「更に生徒達へ危害を加えるなどと……ふざけないでもらおうか」
静かに、けれど苛烈に彼は怒っていた。
すると古の王は一瞬その目線を降ろすと、くすくすと笑った。
そして。
「ならば、こうするとしよう」
巨大な蛇が地上に近い方から身を削り、少しずつ少しずつ小さな蛇を生み出していく。一度に十数匹生まれる、大人の片腕ほどの長さとなった黒い蛇は一斉に森の中へ雪崩込んでいった。
一人である以上、このように数を持って進まれてしまったほうがかえって対処できなくなる。
「くっ!」
咄嗟にフランシスは指揮棒を振るい、雷を発生させて黒い流れへと打ち下ろす。だが。
ばちんっ!
雷を受けたのは黒い蛇でなく古の王。黒い蛇より上空にいた為、打ち下ろされる雷の真下に入り込めば蛇よりも先に受けることが出来る。
そして古の王が雷を受けるということは、とりもなおさず現在の器であるセリオスを傷つけることになる。
「さあ、向こうの子供を守ればこの子供は助からぬ。この子供を助けようと思えば、向こうの子供達は蛇の餌食だ」
痛みを感じていないのか、まったく苦痛を感じさせない声が可笑しそうに言う。
「どうする。外界の者よ」
「段々暗くなってきたね」
「先生大丈夫かな……」
森の異変に気付いた生徒達は自主的に集合場所へと戻ってきていた。各々が口にするのは不安。
それでも修練を積んだ生徒達は周囲を警戒しつつ、ひたすら待つ姿勢をとっていた。
すると。
唐突に生徒の中でも外周側にいた生徒が黒い何かに飲み込まれる。
「う、うわあああっ!」
「きゃあああぁっ!? 何なのこれぇ!」
黒い人型が暴れるのをみて、生徒達はパニックに陥る。そして黒い蛇は次々と混乱し、立ち向かう余裕のない生徒達を飲み込んでいった。
無論、気付いて対処しようとしたものもいたが、例え一匹を蒸発させても次の一匹が襲い掛かる。数が圧倒的に違うのだ。
「や、やだっ!?」
「助けて! 誰か助けてぇ!!」
集合場所は阿鼻叫喚の状況を呈していた。
To be continued...