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2010.2.22 【問】
Novel stage / Fan Fiction:LοV
《繰り返される問》
長い地底の遺跡を抜けて再び光の見える地上まで出てきた頃には、山岳は宵闇を迎えようとしていた。
まるで焔のように朱い朱い大地。
追手がこないことを確認して、カイムは半ば引きずるようにして連れてきたルヴニールを振り返った。
腕を引かれるままについてきた青年。ぼんやりとした表情の中で紅い瞳だけが妙に輝いている。
『ルヴニール』
戦いが終わって初めて名前を呼んだ。
青年はゆっくりと黒翼の男性へ意志の宿らない目を合わせる。そして同じくらい緩慢な動きでその両腕が上がり、そっと掌が男性の火傷の上に翳される。癒しの光が溢れた。
じわじわと炎に灼かれた部分が治っていく。
けれど、カイムは構わずその腕を強く掴んだ。
『ルヴニール』
もう一度青年の名を呼ぶ。
だが言葉が返ることはない。いつもの笑みが浮かぶこともない。
けれど意志が完全にはないわけではないらしく、カイムが全快すると彼の手から光が消えて腕が力なく下がる。
『ルヴニール』
三度目の問に返るのは変わらず虚ろな視線。黒翼の男性は疑惑の目で青年を見た。
同行している期間はそれほど長くはないが、戦闘時などの様子から彼は戦いや旅といったことに慣れている。
また断罪の天使へ躊躇なく止めを刺したことから死に対して経験がないわけではない。現にカイムとヒルダが倒れた時には冷静な判断を下している。
それがこの程度で精神薄弱状態まで追い込まれるものだろうか。
黒翼の男性が考えをめぐらしていると、青年の視線が逸れた。
山岳とは反対側にその腕が振られる。
すると茜色の空に負けないほど紅い光の塊がまばらな木の間に生じた。その数は三つ。
やがて光はそれぞれ異なる形を取り始める。
一対の大長刀を持つ、白く長い髪を靡かせる女戦士。
茶色の髪を結って青い衣を纏う、青い宝玉の杖を持った巫女。
白いケープを羽織る人間より黒く硬質な肌を持つオークの司祭。
ロードが存在する限り使い魔は完全に消滅することはない――謎の声が伝えた通りに、使い魔たる彼らは灰と化しても復活したのだった。
「無事にきゃつらからは逃げたせたらしいの」
「不思議な感じですのね。焼かれた瞬間も覚えていますのに」
「やれやれ。上の軍勢を相手にするよりはましとはいえ対策を考えなければならないな」
紅い光が収まり、彼女達は思い思いの感想を口にしながら二人の方へと歩いてきた。
真っ先に口を開いたのはシャーマンの少女。
「ルヴニールもカイムも逃れられてなによりですわ」
「とりあえず抜けられそうなことは確認できたしな……随分と静かだな」
続いて近付いてきたヒルダも声をかけ、途中で青年の異変に気付いた。
「あら、そういえば、まだご自身のお怪我は治しておりませんのね」
少女も別の違いに気付く。彼女達の声を聞いても、青年のぼんやりとした表情は崩れない。
その様子を見た司祭が首を捻った。
「ふむ……よくはわからぬが、自我が弱っておるのかの」
オークオラクルの言葉に黒翼の男性が頷く。それを確認してから司祭は言葉を続けた。
「じゃが、ここではどうしようもないし対策も練らねばならん。一度ここを離れるとしよう」
全員が賛同し、彼らは青年の腕を引いてその場を立ち去った。
目の前にあった光景は燃え盛る炎に包まれる巫女の少女、女戦士に老いた司祭。
そのはずなのに重なる光景がある。
朱に染まる少女。朱に染まる少年。
動く唇はおぼろげにしか見えないのに、何かが、痛い。
あれはだれ?
痛いのはなに?
なにより。
この光景は一体何……!?
To be continued...