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2010.2.20   【曲】

Novel stage / Fan Fiction:LοV

《夢の中で》


 


 

 ルクサリア国境から力尽くで逃れ、聖ザフー山の東の山岳地帯。スペルヴィアを流れる川の源近くまで出たルヴニールたちは、まばらな木に紛れ休憩を取っていた。
 聖堂都市から脱出して間もなく国境での戦闘。その前には若干の回復時間があったとはいえ、疲労は溜まってきていた。
「うーん。あれを突破するのは難しそうだよねー」
 最初に口を開いたのはルヴニール。結局、使った片手斧もそのまま貰ってきて、現在は背中に確保しながら手に回収した錫杖を持っている。
 その意見には全員が賛同した。
「物量も、圧倒するだけの威力も足りなさすぎる」
「このまま抜けるのは非効率を通り越して不可能じゃのぅ」
 どちらかというと怒鳴りつけるのに疲れた様子のヒルダやあまり様子の変わらない司祭も交えて、魔界王国へと侵入する方法を話し合う。
 空から行く方法や国境を回りこんで軍団の薄いところを探す方法。
 とりあえず後回しにして他の王国へ行くという発言も飛び出すが、どの意見も情報が足りないため決め手にかけたまま。
 結果として。
「少し休みましょう」
 シャーマンの少女の一言で休憩を優先することとなった。

 横になって直にルヴニールの意識は落ちた。
 深く深く、闇の中へ。
 その先には明らかに闇とは異質な姿があった。白い翼で自らを覆い、しゃがんで震えながら周囲を拒絶する天使。
 断罪の天使・パワーズ。
 アルカナのバランスが崩れ意識を乗っ取られそうになった瞬間、ルヴニールは咄嗟に彼女の意識を隔離した。
 この世界に来る前は日常、とはまでは行かないが慣れたやり方であった。
(何に使ってたのか、よく覚えてないんだけどねー……)
 それから、彼は空いた時間や夢でこうして隔離した天使へと会いにくる。
 今は拒絶している為にこのままでも支障は出ていないが、動き出してしまえば押えられるかどうかわからない。あくまで一時的なものなのだ。
「こんばんわ。今日も泣いてるの?」
 ルヴニールは声をかけてから彼女の目の前に座る。
「……私は、また、人間を救えなかった……」
 この空間で会った時からパワーズは泣き続けていた。ずっとずっと。彼女にとってもっとも拭いがたいのはその事実なのだろう。
 そして、彼もまた同じ言葉を言い続けてきた。
「そんなことないよ。貴女がいたから、スペルヴィアの人々は信仰を続けることで自分を保てたんだよ」
 それでも彼女の涙は止まらなかった。
「私、は……」
「うーん。どうしたら信じてもらえるのかなぁ」
 子供へするようにルヴニールはパワーズの頭を撫でる。戦っていた者同士とは思えない光景だった。
 すると、突然青年は手を叩いた。
「そうだ」
 そして彼女の肩を軽く揺さぶる。
「ねぇ、パワーズちゃん。じゃあ、私を助けてくれない?」
「……え?」
 唐突の言葉に天使は顔を上げる。泣きはらした赤い目が痛々しい。
「ロードだけど私も人間だから。助けてくれない、かな」
 いい思いつき、とでも言いたげなにこにこという笑みを浮かべて彼は言う。
「私達はこれから魔界王国に行きたいんだけど、国境が通れないんだ。何か抜ける方法知らないかなー」
 パワーズは呆然と目の前の顔を見ているだけだった。
「……駄目?」
 青年のダメ押しの一言にもまだ目をぱちくりさせて、それでも天使は言葉を紡いだ。
「え、国境の山脈、聖ザフーから東に曲がった所に抜け道がある、と言い伝えが……」
 言い終わる前に、ルヴニールはパワーズの手を取ってぶんぶんと振った。
「そうなんだ。ありがとうパワーズちゃん!」
 嬉しそうに何度も上下に振って、下ろす。そして彼は言った。
「これでパワーズちゃんは、少なくとも人を一人救ったよ」
「え、あ……」
 話が急に進みすぎて天使にはついていけない。それでも、目の前の優しい笑顔が泣き続けることしか出来なかった彼女に、何かを与えた。
 パワーズはもう泣かずに、目の前で異世界の聖歌を口ずさみ始めた青年を見ていた。


 To be continued...


 

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