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2010.2.17   【台】

Novel stage / Fan Fiction:LοV

《紅の断頭台》


 


 

 開幕は剣を翳した天使から数本生まれ片側から飛ばされる白く光る剣。
「散れ!」
 まだ距離のあるうちに発動されたその光は容易に回避できる。ヒルダの掛け声と共に一気に散開し、全員が剣の横を抜けた。
『……先に行く』
「参りますわっ!」
 勢いを殺さずに右翼から黒い剣で斬りかかるカイム。逆側からはシャーマンの杖の先端にある青い宝玉から雷が迸った。
 黒き刃は天使の左腕を切り裂き、雷は天使の剣を通り弾ける。
 しかし彼女は。
「平伏しなさい!」
 即座に白い剣を横に薙ぐ。与えられたダメージは既に再生を始め、また剣も雷も本来の威力ほどの損害を与えていない。
「……結構硬いですのっ!」
 雷を打ち出す、という方式であった為に近距離ではなかった少女は刃を身に掠らせながらも後ろに下がって範囲外に出る。
 一方、斬りかかった為に至近距離だったカイムは逆に走り抜き、天使の背後に回ることで横薙ぎの一撃を避けた。
「追撃いっくよー」
 パワーズの剣が振り切られた時を目掛けてルヴニールが駆け込む。金色の錫杖に宿っているのは闇の力。
 彼が持つのはシャーマンと同様、杖ではあるが、彼はその力を打ち出さない。錫杖に纏わりつかせたまま胴部を打擲、次の刃が襲い来る前に攻撃範囲から逃げ出す。
 瞬時に二の刃が繰り出され、青年が飛び退ったぎりぎりの位置が白く光る。
「せあっ!」
 そして再び訪れた隙を目掛けて切りかかったのはヒルダと背後へ回り込んだカイム。一対の長刀と黒き剣が前後から天使を切り裂く。
 累積されていくダメージ。それは彼女の持つアルカナに依存する再生能力でも追いつかなくなってくる。
 それでも元々持つパワーズのポテンシャルはルヴニール達より遥かに大きかった。
「この程度の力で私と戦おうなどと、愚かな考えはおよしなさい!」
 彼女は狂ったように剣を振るい続ける。現に今まで与えたダメージはそれほど大きいものには見えない。
 それでも彼らは逆らい続ける。
「く……一度下がれ!」
 反撃を食らい、下がったヒルダが全員を近くに集める。ある程度近付いたところで、彼女は自らの長刀を胸の前で交差し叫ぶ。
「こおおおぉぉぉぉっ!」
 バーサーク。
 ウォークライとも呼ばれる、バーサーカーが用いる味方の戦意を鼓舞する咆哮だ。
「ヒルダちゃんさんきゅっ!」
 全員の距離が離れた為に再び打ち出された四本の剣を回避して、ルヴニールが再び天使へと駆け出す。
 再び加えた一撃は相手の左腕、盾を僅かに逸れた所に当った。
 その時。
「あああぁ……っ!」
 パワーズの背の翼が羽ばたきをやめる。
「力が……抜ける……!」
 そのまま地に倒れ伏す天使を見て、オークの司祭がその考えを巡らせる。
「ふむ。アルカナから引き出した力を一度に使いすぎたようじゃな」
 言いながら、今まで下がっていた司祭は一気に天使へ接近した。
「一時的にバランスが崩れておるが、長くは続かぬ。今のうちに集中するのじゃ!」
 響いた言葉にルヴニールを追うように駆け出していた三人も攻撃を開始する。黒い剣、闇の力が篭った錫杖、打ち出される雷、一対の長刀、どれも先程以上のダメージを与えている。
 加えて謎の魔法文字の描かれた六角棒も加わり、パワーズの体力は驚く程削れて行く。
(私は……)
 力の入らない身体、はばたかない翼。
 切り裂かれ打たれていく中で、彼女は叫んだ。
「私はこんな所で負けない!」
 途端、天使の周囲が吹き飛び、彼女は自由を取り戻す。白い翼がパワーズを包み込むと消え、神の御使の姿は彼女が最初に立っていた位置にあった。
「くぅ……もう崩れた力を整えおったか」
 吹き飛ばされたオークオラクルが尻餅をついたような状態で呻く。
 叩きつけるような衝撃は予想外だったために、全員が一気に吹き飛ばされた。特に防御力の低い司祭やルヴニールが受けた衝撃は大きい。
「いったぁ……息詰まるかと思った……」
 身体を折って、げほげほと咳き込む青年。彼は体力そのものもそれほど高くないのだ。
『……まだ行けるか』
「けほ……大丈夫。この程度なら、まだ慣れてる方ー」
 駆け出す前にカイムが声をかけていくが、言葉に偽りはないようで青年は直に立ち上がり錫杖を構える。
 パワーズほどアルカナの力を引き出せないとはいえ、彼もまたロードなのだ。
「行こっ!」
 先に天使との交戦を始めた仲間達を追い、ルヴニールは走り出す。
 更にその後を追うカイムに漸く立ち上がった司祭が叫んだ。
「主とルヴニールの持つ闇の力が、神の僕たる天使には最も効果的じゃ。気合入れて行くがいい」

「私はっ!こんなところで負けないっ!」
 パワーズは近付いてきた人間達へ光り輝く球体を放射状に打ち出す。
「十二年前、私は神へ助けを求める人間に何も出来なかった!」
 破裂する光の間から抜けてくる雷を光の剣で打ち落とす。
「ただ翼を震わせて人間が石畳の上で屍になるのを見ているしかなかった!」
 反対側から切りかかってくる一対の長刀に腕を切り裂かれながら、己も剣を振るい黒き衣ごと女性の胴部を削る。
「だからっ! 今度こそ私は人間を導く!」
 深手を負ったヒルダに代わって青年が前に出る。一撃の威力は低いが攻撃回数は多い闇の宿った錫杖。
 雷も未だに打ち続けられている。
「唯一絶対の神の庇護を受けることが幸いだと何故気付かないのっ!」
 アルカナの力が一瞬崩れた瞬間に与えられた大きなダメージが天使を焦らせていた。その焦りは攻撃や叫びだした言葉にも伺える。
「これで終わりですわっ!」
 大薙ぎの剣を避けて、繰り出される雷。それはパワーズの身を僅かに削り……再び、均衡が崩れる。
「あ、あぁっ!」
 力なく膝を突く天使。その背後に迫るのは黒き剣を翳した男性。
 カイムの周囲には天使が打ち出した光の剣を闇に染めた黒き光の剣が数本、まるで彼が追う黒き翼の如く浮かび、剣を振り下ろすと同時に身動きの取れない彼女に突き刺さっていった。
「きゃあああああぁっ!」
 天使にとっては忌まわしき闇の力が全身を貫く苦痛に、パワーズから悲鳴が上がる。
 そして。
 彼女の目の前には、錫杖に力を蓄え終えた青年。
「ばいばい」
 錫杖から迸った闇の力。
 それは地面から紅く鋭いクリスタル状となって湧き上がり、天使の首を切り裂いた。


 To be continued...


 

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