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2010.2.24 【蘇】
Novel stage / Fan Fiction:LοV
《闇よりいでしもの》
月のない闇の中。
宿で眠っているはずの青年は、何故か宿の外に佇んでいる。壁に背を預け、マントだけ肩に引っ掛けていた。
街中とはいえこんな深夜に出歩く者はおらず、あたりは静けさだけが漂っているそんな場所で、虚ろな目が空を見ている。
見ていたはずだった。
少なくとも意識はどこにもないように見えた。
それなのに。
唐突に頭上から落ちてくる気配なき人影を、人影が手に一本ずつ構える長い刃を、最小限の動きで避わした。
人影は言葉は出さないものの驚きの気配を漏らす。しかし、直に一度距離をおくと刃を構え直した。腕の外側へ沿う様に湾曲した刃は闇へと溶け込み、その太刀筋をも読ませない。
はずだったのだ。
「……無理」
ぽつりと呟かれた言葉は人影の頭上から発せられたもの。距離があき、闇に紛れたのは人影だけでなく青年もだった。
人影に反応する暇も与えず、背中、首より少し下あたりに着地。そのまま大地へと押し付ける。いくら青年が細身とはいえ重量はそれなり、落下時にかかる加速度も加われば不安定な体勢で弾ける様なものではない。
ぺきぽき……何かが折れる音が小さく闇に溶けた。
「……っぁ……」
微かにもれる悲鳴は青年に聞き覚えのない少女のもの。
尤もルヴニールはそんな事を気にもとめず、彼女の上から降りる。そして、無造作に左足で倒れた少女の左手を踏むと右足でその肘を蹴る。
あっさりと、左肘の関節は外れた。
(……なんなの。これは、なんなの……)
人影は混乱していた。
それでも、あまりにも差がありすぎる。そう判断した人影は刃を拾って逃走した。
青年は闇の中でその行方を確実に瞳で追いながらも、再び壁にもたれかかってぼんやりと漆黒の空を眺めていた。
このメンバーの中で最も起きるのが早いのは巫女の少女であることが多い。
まだ鳥達だけが起きているような早朝、彼女は鍛錬の一つである瞑想を行う。澄み切った水面のように精神を落ち着かせて静めること数時間。
「今日はどういたしましょう。ルヴニールが目を覚ました時用に、対抗できそうな魔獣を見つけましょうか……」
そう言いながら彼女が宿の井戸の側へ行くと、ぼんやりと立っている人影があった。
服の上に白い外套を羽織っただけの、見覚えのある青年。
彼は少女に気付いて、にこ、と笑う。
「いい朝だねー。おはよー」
自我を復活させ、完全蘇生したルヴニールが仲間にかけた最初の一言だった。
To be conutinued...