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2010.12.9 【笛】
Novel Stage / Fun Fiction:LoV
《永遠の夜の女王》
派手な原色を纏う道化師によって漆黒の空へ向かって高らかに笛が吹き鳴らされた。
それは不死の都における食事の時間。
街の大通りを行進する一群の先頭に立つのは、牙の生え揃った帽子がにたにた笑うネクロマンサー。死霊使いに率いられた腐食した死体や剣を持った骸骨に囲まれて、虚ろな目をした人間達が力ない足取りで王城へと連れられていく。
永遠の夜の都において、人間は不死族の餌でしかないのだ。
そして血を啜られ、肉を裂かれ、魂すらも貪られた人間は、やがて彼らの仲間入りを果たすこととなる。
「うーん。生産性もないけど無駄もないねー」
こっそり忍び込んで様子を窺ってきた元暗殺者の報告を聞いた第一声がこれだった。発言主は言うまでもない。即座にヒルデガルドの拳の一撃が飛んできて地面に沈んだが。
「みぎゃ」
顔面からめり込んだ青年を避けこそすれ、誰も助けようとはしなかった。あえて言うならシャーマンの少女が心配と哀れみの混ざった視線を投げたくらいだ。
けれど彼らにはもっと重要なことがあるのだ。
「ふざけた感想はおいておくにしろ、人間の補充は必要だろうな。子供の成育と捕食スピードが追いついているとは思えない」
「むしろ、魂を喰ろう者にとっては赤子の方がよいという話も聞くしの」
オークの老司祭も深く頷く。
補充が必要、ということは、補充を手がける役割の者達があの不死の都にいるということだ。
そして調達には無論のこと都から出る必要がある。
「思考能力の低いスケルトンくらいしか出てこないでしょうけれど、都に出入りする方法くらいはわかりますよね」
シャーマンも頷く。そう、彼らは王都エルムに辿り着いたものの、内部へ侵入する方法がなかったのだ。
エルムに程近いこの街で滞在すること数日経つが、蝿の女王のように迎えを寄越したりするつもりはまったくない。地面にめり込んでいるロードは当然かもねーと笑っていたが理由は言わなかった。
そうなると侵入方法を探す必要がある。アサシンであるフィーギーナやどこで学んだかよくわからない敏捷能力を持っているルヴニールなら城壁をよじ登ってなどと言い出しかねないが、二人だけを行かせるのは非常に難しい。実質脆さの二大筆頭だ。
『一組に全員が張り付くのは効率が悪い』
「えー何人か一組で複数グループみつけたほーがいいんじゃないかとカイムが言ってるよー」
後頭部をさすりながら起き上がったルヴニールが丁度呟いた黒翼の男性の言葉を伝え、結局二人一組で見張ることになった。グレムリンは青年に懐いて離れないのでカウント外だ。
適当にいる位置で二組に分け、青年が何故か楽しそうにアミダくじを地面に書いて組み合わせを決める。
「では、早速ばらけて手がかりを見つけましょう。よろしくお願いいたしますわ、ヒルダさん」
「ああ」
シャーマンとバーサーカーが立ち上がると出発準備を整える。ルヴニールとカイムも同様だ。オークオラクルとアサシンの少女はこの街にも来る可能性が十分あると考え、拠点も兼ねて待機を決めた。
「じゃあ私も行って来るねー」
「ぎいっ!」
無言で先に歩き始めた黒翼の男性を追って、にこにこと手を振りながら青年も外へと駆けていった。小悪魔も魔界王国から離れてからルヴニールが構うように気を配っていたので、きっちり肩の上に乗っかってご機嫌だ。
「……あいつはあれで真面目にやる気があるのか?」
「遊んでいても目敏いですから大丈夫だと思います」
あまりにもお気楽な様子を見て呟いたヒルダ。それにフォローだかなんだかよくわからないフィーギーナの言葉が応える。
全員が、同時に溜息をついた。
To be continued...