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2010.1.16
【紅】
(Novel Stage / original:Willwart)

《真紅の外套》


 



 

 長閑な陽気が漂う春の日。
 黒翼の青年が昼食を終えて家に戻ると、その前には友人の白翼の青年が立っていた。
 戻ってきたのに気付くと、彼は軽く手を上げる。
「よ、ギル」
「アレク。どうかしたのか」
 ギルフォードが尋ねると、友人は少し困った顔をして言う。
「ちょっと相談事なんだ。時間あるか」
「ああ」
 彼が人に相談してくることは珍しい。青年のその疑問は次の一言で解決した。
「その……パールの継承、の話なんだ」
 ただでさえ寿命の長い翼持つ種族だが、まったく死なないわけではない。不老であっても不死ではないのだ。
 彼らが死ぬ時、ごく稀に魂とでも呼ぶべきものが結晶化し、まるで宝石のようになる。理由はわかっていないが、翼持つ者達が持つ魔法のような力に関係しているのではないかと言われ、力が大きい者ほど結晶化が起こる傾向がある。
 その石は意志を持ち、選んだ者へ自らの力を継承させる。力を渡すことで、結晶化したものは漸く眠りにつくのだ。
「……選ばれたのか?」
「ああ。だが、まだ継承は終わっていないみたいなんだ。
 最近、パールが部屋に篭ってずっと話しているみたいで」
 苦々しくアレクは言った。
「話している内容がわからない以上、俺には手が出せなくてな……お前に、頼みたい」
 アレクサンドルは継承者ではない為に石との会話はできない。何よりも第一に妹を思う彼にとっては、手を出せないのは相当悔しいことだろう。
 それでも出来る限りのことをするためにここへ来たのだと、ギルフォードは悟った。
「ああ、判った。パールは今も部屋に?」
「だと思う……すまん」
「いや。気にするな」
 ばさり、と皮膜に覆われた黒い翼が羽ばたく。
「それなら、早速行ってくる。お前も戻るか?」
「いや……俺はこっちで待っててもいいか? 側にいても何も出来なさそうだ」
「構わない。また後でな」
 ギルフォードは空へと舞い上がり、駆けていく。
 少女の元へと。

 青年が向かったのは簡単な理由だった。継承者にしか聞こえない石の言葉を聞けること。
 そう、彼もまた継承者だった。
 "真紅の外套"エルスタイン=ルベウス、という名の石の。
 その時の暴走振りを、彼は今も覚えている。
「暴走するような性質の石でなければいいが……」


 Fine.

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