[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
2010.9.1 【米】
Novel stage / Fun Fiction:ととモノ。
《朝》
からんっ!
軽い金属が床に落ちる音でカゲロウは目を覚ました。
ぼんやりとした意識のまま枕に落ちる長い水色の髪をかきあげる。耳を覆っていた障害物が取り除かれると、一枚の扉を隔ててひそひそ囁きあう声が聞こえる。
小さいが、確かに聞き覚えのある声。
ノームの少女はぱちぱちと数度瞬きを繰り返すとベッドサイドにあった白いリボンで髪を首の後ろに束ねる。そしてスリッパを軽く引っ掛けるとぺたぺたと部屋の外へと歩いていった。
ぱたん、と軽くドアを開けると先程よりもはっきりと言葉が聞こえる。
「カゲロウさん、起きてしまわれたでしょうか……?」
「うーん。あんまり起きてこないからわからないなぁ」
聞こえてくる声の方向にカゲロウは歩いていく。ちなみに彼女は別に寝起きが悪い訳ではない。単に起きて付き合わされるのが面倒なだけであって覚醒はかなり早い。
今回起きたのはいつもはしゃいでいる小さな友人だけでなく、他の人の声も聞こえたからだ。
「まあ、起きたらきっと来るよ。残り作っちゃおう!」
「まだ早いですし、少し静かに参りましょうか」
元気良く作業を続ける様子を窘める声もまたカゲロウの知っている声だ。
かわらぬ足取りで向かった先にあるのは、学生寮の給湯室。
そっとノームの少女が覗くと、ユノとマリーチが手をご飯粒だらけにして重箱におにぎりを作って詰めていた。今日の昼食用だろう。
流石に毎日作っているだけあってクラッズの少女の手付きは慣れていた。比べてセレスティアの少女は不器用で上手く三角形を作れないでいる。
「マリーチちゃん、握るときは指を曲げてね」
「こ、こうですか~?」
時折ユノが教えているが、簡単には慣れないらしい。
「……ま、愛情はいっぱい篭ってるから大丈夫よ。うん」
学校に入るとほぼ同時に昼食作りを始めた彼女とは経験に差があって当然だ。うんうんと頷いてユノは最後の一つを握り終えた。
「うん。これで終わり。マリーチちゃん手伝ってくれてありがとう」
「いえ~。お役に立てれば嬉しいです~」
重箱を包むユノ。手が空いたマリーチは道具を水に沈めていた。米粒はうるかしておかないと簡単には落ちない。
中に杓文字の入ったボウルがあるところをみると、床に落ちたのはそれらしい。
「それにしても起きてこないわねカゲロウ。やっぱり起きなかったのよ」
「お休みをお邪魔しなかったのならそれでよろしいです~」
微笑む二人の少女の後ろにひっそり立っていたカゲロウはぽつり、と呟いた。
「……おはよう」
反応は言うまでもなかった。
Fine.