365 letters 2010.5.30 忍者ブログ
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2010.5.30   【超】

Novel stage / Fun Fiction:LοV

《海神の声》


 


 

 バーサーカーが復活した翌日、村に吹き荒んでいた吹雪は収まり、雪の結晶が陽の光に煌めいていた。
 平穏な雪原の中を一行は滞りなく出発した。
 吹雪は止んだとはいえ、見渡す限り雪なのは変わらない。
「そういえば、あれはいったい何だったのだ」
 すっかり元に戻った彼女の問いへ地図を見ていたシャーマンの少女が答える。
「死んだ村人のどなたかだと思われますわ。あまりにも突然死んでしまって、よくわからないまま助けを求めていたようです」
「どっちかっていうと仲間がほしかったのかもー」
 言葉をつないだのはルヴニール。退屈そうなグレムリンを菓子で釣って遊ばせている。
「だから手段は違えど似たような状況のヒルダちゃんが、助けてって言うんじゃなくて自分の力で抜けるっていうと思わなかったんだよー」
 きぃきぃじゃれている小悪魔を肩に乗せながら、青年は笑った。
 そのまま進んでいこうとするのをなぜか黒翼の男性が止めた。
「ん?」
 不思議そうな表情を浮かべるルヴニールの前に立つと、カイムは漆黒の剣を抜いて構えた。
 すると。
「あの者はどうしても家族や友人を失った悲しみを超えられなんだ。哀れなことよ」
 ひゅうっと彼らの眼前の少し前で風が渦巻く。
 旋風の中から現れたのは、両手に采配をもった猿顔の行者のような格好をした影。
「決して救われる結末ではなかったが、いやはや面白い解決法を取ったものよ。こたびの人間のロードが変わり者という噂は偽りでなかったようだ」
 警戒する仲間達の中で、名前の挙がった当人だけがにこやかに応じる。
「いきなり変人呼ばわりって酷いなー。それに、抜けたのはヒルダちゃんが強かったからだよー」
「それを喚起させたのはお主だろう。人のロードよ」
 くくく、と喉の奥で笑う出現した人影。
「麻薬によって生じた心の壁の綻びから悪夢へ干渉、道を示すとは。儂も考え付かなかった手段よ」
「あははー。あんまり誉められることじゃないけどねー」
 二人の会話だけはどこまでも朗らか。だが周りの仲間達は徐々に緊張を高めている。
 緊迫してくる雰囲気を感じ取ったのか、笑っていた猿顔が急に引き締まった。
「まあ、そろそろ本題に入ろうかの」
「はーい。それで、ずっと見ていたようだけど何の用かなー」
 答える方はにこにこと笑ったままだが、さりげなくバーサーカーやアサシンによって後ろへ下げられている。水面下での抵抗はしているが、気にされていないらしい。
 真面目な顔をして話を続ける人影。
「儂は猿田彦。神族の端くれ、とでも言おうか。主らに提案があって来た」
「提案じゃと?」
 オークの老司祭が全員の意思を反映した呟きを漏らす。
「何、簡単なことだ。儂は主らにこの吹雪の元凶の場所を教える、代わりに、主らにその者を倒して欲しい」
 猿田彦と名乗る行者姿の人影は真っ直ぐに一行と向き合う。
「吹雪の元凶というのは主らの目指す蝿の女王の使い魔。つまりは主らの障害も減る。悪い話ではなかろう」
 彼らの目的は魔界王国の主からアルカナを奪うこと。確かに手下を倒すことは有意義ではある。
 だが、まだ謎は残る。
「それで、貴方にはどんな利点があるというのです?」
 ルヴニール達にとっての利点は高い。しかし、猿田彦にとっての利点は今のところ見えないのだ。
 少女の問に対して、行者姿の神はきつい表情を少々歪ませて答える。
「……詳しい事情は話せぬが、儂はあやつを止めねばならぬ。しかし、儂の力であやつをとめることは出来ぬのだ」
「その為に私達を利用するということか」
 ヒルダが厳しい声色で言うが猿田彦は平然と返した。
「結果的にはそうなるかもしれぬ」
「お互いに利害関係が生じているから取引の方が近いかなー。私は悪くないと思うけど、どうかなー?」
 ルヴニールが全員へ提案する。
 真っ先に賛成の声を上げたのは青年の方に乗る小悪魔。きぃきぃと飛び跳ねている。
「全面的には信じられませんけれど、確かに悪くはないお話ですわ」
「次の目的地は現在定まっておらぬしの」
 消極的ではあるが賛成の意を示すのはシャーマンとオークオラクル。暗殺者の少女は青年に従うというスタンスを崩していない。
「……ルヴニール、もう一人の人間のロードとかいうのがどこにいるのかはわかるか?」
「え、リシアちゃん?」
 ヒルダが青年へ確認する。再びロード同士の共鳴を引き起こすわけにはいかないが、彼は意識を集中させてみた。
 ぼんやりと広げていく意識の中で同じ力を持つ者を探る。前の時と位置が変わっているのは……破壊王国に二つの力があること。
「遠そう、だよ?」
「陽動の線はないか……」
 悩んだ後、彼女は頷く。最後に青年が見上げたカイムもまた一つ頷いた。
「では決まりのようだな。案内するとしよう」
 猿田彦は采配をふるい、一向の戦闘へと立った。

 雪原の吹雪が止まぬ場所がある。
 それはまるで、誰かが泣いているかのように。
 それはまるで、誰かが怒っているかのように。
 決して、止むことはない。


 To be continued...


 

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