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2010.4.9 【表】
Novel stage / Fun Fiction:LοV
《閑話休題:はじめてのおつかい No.2》
裏路地を適当に曲がって、走って。元いた道から見えなくなった頃に二人は立ち止まった。
「もう大丈夫かなー。多分、すぐに解散しただろうしー」
ルヴニールが呟いて振り返る。追いかけてくる人影はなく、ただ手を繋いだ少年が疲れて立っていた。
息が上がった子供は、青年が立ち止まると座り込んでしまう。
それを見て、ルヴニールもしゃがんで目線を合わせた。
「どっか痛いー? 捻っちゃったりしたー?」
左右に首を傾げて尋ねると子供は首を横に振った。そして泣きそうな声がぽつり、ぽつりと聞こえてくる。
「どうして、ああなってしまうのですか……僕は、ただ、あの子が餓えないようにって、それだけだったのに……」
自分の行いがここまで騒ぎを派生させることになるとは考えなかったのか、少年は酷く落ち込んでいた。
「難しい問題だからねー」
立ち上がれそうにない彼へルヴニールは返した。特に急いで帰る必要もなければ、一応助けてしまった義理もあるので付き合ってみることにしたようだ。
「あの子は確かに今日餓えることはないかもしれない。でも、この先ずーっと君がお金をあげるわけにもいかないよねー」
子供が俯いていた顔を上げると、にこにこと優しそうな笑顔が目の前にあった。
「根本的な解決にならない限り、生きて餓えの苦しみに耐えるか、死んで解放されるかのどっちかってことだよー」
言っている事の残酷さに似合わず、その笑みは変わらない。少年はそれに気付かず怒った表情で言い返した。
「それは……そうです。でも、今見過ごしたら、あの子は死んでしまうかも知れません。あんな小さな子が……」
「死は、数少ない平等なものだよー。幼くても老いても死神は常に側にある、ってねー」
子供の反論にもルヴニールは即座に応えた。
違うと言いたい。けれど咄嗟に言い返せるだけの根拠をもたず唇を噛む彼の頭にぽふっと軽く手が乗せられる。
「でもね。君みたいな考えは、ずっと持ってて欲しいなー。あとはもっと搦め手を覚えてね、どうやったら根本的な解決になるかを考えればいいんだよー」
なでなでと微笑みながら撫でる。まるで慰めるかのように。
もちろん子供がそれだけで誤魔化される事はない。けれど、実際に反論できないのはルヴニールの言う通りであるから。
「……はい」
不承不承でも頷いた。
するとルヴニールが軽く弾みをつけて立ち上がった。引っ張られるように少年も立ち上がる。
「さて、とりあえず表通りに戻ろうか。君は誰かと一緒に来たのー?」
「あ、はい。家の者と……」
青年が導くままに来た道を戻っていくと、市場の大通りに出る。集まっていた人々はもう誰も残っていない、普段通りの市場だ。
それから程なくして少年の同行者は見つかった。彼らもまた少年を探して、大通りを何週もしていたらしい。
「じゃーね、少年。また縁があればー」
「あ、その……ありがとうございました」
頭を下げた子供を乗せた馬車が市場を離れていくのをルヴニールは見送った。
二頭立てで立派な紋章がつけられている馬車。紋章は中央に大きな盾が飾られていて、それは紅い石が嵌め込まれている。
そして、紅い石は青年へ否応なしに思い出させる。
この地に飛ばされる原因となった紅い石。今ならわかる、おそらくアルカナであっただろう紅い……。
「……私、石をどこで見たんだっけ……?」
ルヴニールはぽつん、と呟く。
けれど、すぐに何事もなかったかのようにカイムとの合流地点へと向かった。
Fine.