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2010.4.7 【買】
Novel stage / Fun Fiction:LοV
《閑話休題:はじめてのおつかい》
この荒れ果てた大陸であっても、人が住み、通貨がある以上、売買が盛んな場所というものはある。人口の多い都市部が近ければなおさらだ。
ルヴニールが立っているのもそんな場所の一つだった。聖都にほど近い街の市場は小さいながらも様々な品が流れてきている。
「干物とー袋とーあと薬がいくつか、だったっけー」
忘れないよう口に出しながら言う青年は、まず全体を把握すると必要な物を売っている所へと向かう。
「ちゃんと読めるかなー」
カイムも同様だが、ルヴニールはこの地へ来たこともないのに、何故か会話する上で言語に困ることはなかった。
会話する上では。
そう、看板などに書かれた文字を読むことは出来なかったのだ。もちろん書くことも出来ない。
そのことに気付いてからヒルダやシャーマン、司祭が持ち回りで彼らへ共通語を教えていた。もうそろそろ覚えただろうということで、彼らは情報収集で忙しい仲間たちの代わりに出てきたのだ。
「薬はカイムにお願いしたし、あとは保存食ー」
手分けした内容を思い出しながら、きょろきょろと見回して乾物を扱う出店を探す。すると、歩いていく先に彼と同じように周囲を見渡す人がいた。
まだ少年とも呼べる年頃の子供はフードを深くかぶり、いかにも慣れていません、といった雰囲気だ。
(この世界にもいるんだなー。いかにも庶民じゃありませんーって人ー)
ルヴニールはなんとなく少年を目で追っていたが、目的の店を見つけてそちらに意識がいく。
品物は見れば大体の正体がつかめるが、値段は読まなければわからない。懸命に覚えた数字や単語を思い出す。
「えーっと、肉と野菜、あと干果がこれだけいるから、合計五百ソールかな」
店主に尋ねて答えを確認し、小さくガッツポーズ。買った品物を袋の中に詰め込む。
用事が終わりいつも以上ににこにこ笑顔でルヴニールは市場から出ようとした。荷物を背負い振り返る途中で、またあの少年が目に入る。
手を差し出すボロ布を纏った子供へなにがしか握らせる少年。途端に大勢の人から手を差し出されて困っている。
「おやぁ?」
青年は笑みに苦い物を混ぜる。どうやらお坊っちゃんの中でも人の良いタイプらしい。
口コミで段々少年に集まる人が増えていく。何か言っているようだが、そんなものを聞き入れるはずもない。
「仕方ないなー」
苦笑が、悪戯を企む笑みに変わった。
少年は人だかりの中にいながら、外に出ようと出来る限り壁際の方へと寄っていく。焦っていたせいか、それが追い詰められるということに気付かなかった。
いくつもいくつも差し出される手に捕まってしまいそうな印象を覚え、恐怖すら感じ始めていた少年。
すると突然。
ぱあっと少年と人々の間に闇の帳が生じた。
「そこな少年。今のうちにこっちこっち。あ、しゃがんでおいで」
「え……?」
事態がわからず固まる少年を、にぱっと笑ったルヴニールが路地の方へと導く。わからないなりにも逃れる機会ないと考えたのか、大人しく彼は従う。
闇が晴れたときには貧しい人々だけが残り、彼らは三々五々散っていった。
To be continued...