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2010.4.5   【神】

Novel stage / Fun Fiction:Fire Emblem 聖戦の系譜

《風の神の歌》


 


 

 光の公子の軍が拠点を制圧し、次の戦いに向けて情報収集を兼ねる休息期間が設けられていた。
 終わらぬ戦いの中の休息は、自然と鍛錬や戦術、戦略等の自己強化に向けられることが多い。

「セティの魔法は歌ってるように聞こえるよな」
 自然と集まった魔法使い達の談話中、唐突にアーサーが言った。
「歌?」
「あ、とってもわかります。お兄ちゃんの言いたいこと」
 言われた本人が不思議そうに聞き返す隣でティニーがこくこくと頷く。
「言葉にならない言葉で奏でられる旋律のように聞こえるのですよね」
「そうそう。風の魔法に限らず、流れる歌に一瞬包まれるような感覚があるんだ」
 流石、兄妹は共通の感覚があるようでお互いに納得している。尤も使っているセティ当人にはまったく自覚がない為、首を傾げるばかりだ。
「そんな、ものかな」
「自覚の有無はありますけれど、人によって個性が出ますから」
 戸惑うセティへティニーが微笑んで答える。
「誰かに教わると、師匠の癖が写ることもありますが」
「同じサンダーでも俺が使うのとティニーが使うのだと、魔力以外にも違いが出るってことさ。俺達は基本を母さんから学んだけど、離れている期間が長かったからな」
 アーサーの言葉に、風使いは戦闘の様子を思い出していく。
 ティニーの雷はどこまでも真っ直ぐで素直だ。純白に近い輝きを持っている。剣の手ほどきをしたアレスやリーフが剣筋も真っ直ぐだと言っていた。例えるなら……太陽の光。
 アーサーの雷はどこかとらえどころがない。狡猾というよりは遊んでいるようでいて確実に敵を捉えている。炎も雷も風も、精霊達は楽しんで追従している。例えるならば……季節の風。
 もし同じようにセティの魔法が歌として捉えられるのならば、それが個性なのだろう。
「そうか……そういえば幼い頃、母に私の魔法は父と同じだと言われたことがある」
「だとしたら、風に愛された者特有のものなのかも知れませんね」
 懐かしい目をしたセティにティニーが応え、アーサーが笑みを浮かべながら言った。
「きっと風は風の神器で奏でられる歌が聞きたいんだよ。風の神の歌ってとこか」
 冗談めかして発せられたその一言は、不思議な説得力を持って三人に染み渡った。

 風は待っている。
 音無き音、歌詞無き歌詞で奏でられる歌を。


 Fine.


 

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