365 letters 2010.4.10 忍者ブログ
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2010.4.10   【木】

Novel stage / original

《応え》


 



 

 やっほぉ。

やっほぉ。 

 今日も誰かがボクを呼んだ。
 人里から遠く離れた標高の高い森の中なのに、毎日のようにここに住んでいない誰かが呼びかけてくる。
 ボクは頑張ってくれた人には頑張って返すよ。
 呼びかけが聞こえない人はごめんね。返せないよ。
 ボクは生まれたときから森にいて、物心ついたときにはこうしていた。
 でも、ずっとね、興味があったんだ。
 ボクに呼びかけてくれる人達は一体どこから来るんだろう?
 この森にないものも沢山持ってる。あれはどこにあるのだろう?
 そんな疑問をずっと持っていたせいなんだろうか。

 ボクは、ある日森から連れ出された。

 狭い箱に詰め込まれて、初めての場所を沢山見た。
 木のない所。
 白や灰色、黒が緑より多い所。
 長い箱のなかに人が沢山詰まっている所。
 動いている絵。
 誰もいないところに話しかける人。
 そして、ボクは誰かの家に運び込まれた。
 箱が外されて、太陽と人工の光を浴びる。空気はあまり綺麗じゃなくて、黒くなってしまいそうだ。
 しばらくボクが休んでいると、この家に住んでいると思われる人がボクに話しかける。
 ボクはいつものように返そうとした。
 けれど。
 声が、出ない。
 話しかけられたら、話し返すのに。何故か声が出なくなっていた。
 ボクはとても慌てた。でも、ボクの前にいる人はまったく気にしていなかった。
 答えがないのが当たり前のように。
 ボクは訳がわからなくて、何度も声を返そうとしたけれど、駄目だった。
 そんなことが何日も続いて、ボクは声を返すのを諦めた。

 すると、ボクは眠っていることが多くなった。

 勝手に話しかけていく人も気にならなくなって、ずっとずっと。
 一年も経つと、眠っている時間の方が長くなった。
 でも、誰も気にしなかった。

 それから三年経った。
 ごめんね。もう、ボク、起きてられない。
 光も浴びてるし、水も、栄養も取ってる。
 それなのに、どうしても眠たいんだ。
 ごめんね。返事できなくて。

 それじゃあ、おやすみ。

 ……ボク? ボクはね、木霊って、言うんだよ……。


 Fine.


 

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