since 2010.1.1/1日1題に挑戦終了。現在不定期更新。
〓 Admin 〓
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
2010.4.12 【明】
Novel stage / original:Willwart
《明星》
空中都市の中でも厚い雲の深部に隠された宮。
立方体に近い巨大な建物は外壁に窓どころか扉一つ無くただ不思議な文様が黒く描かれていた。
その建物へ蝙蝠の様な黒い羽を持つ青年が降り立った。海のような青く長いコート。同色のバンダナで短い茶髪を纏めている。
彼は立方体の頂点近くにただ立っていた。
建物は近くで見ると真っ直ぐに細い線が見え、実はいくつもの立方体が集まって出来ていることがわかる。文様はそれぞれの小さな箱に描かれているのか、継ぎ目とおぼしき部分で文様が変わっている。
青年の用事があるのは彼が降りたブロックのみらしく、時折歩いたり座ってみたりするが隣接するブロックへ移ることはない。
何をするでもなく、ただそこにいる。
けれど、その表情は時折変わっていた。
基本的には何の表情も浮かんでいない彼の顔。しかし、ふと口元が弛んだり、優しそうな笑みが浮かぶことが在った。
そしてその後は必ず、悲しそうに自らの乗る立方体へと目を向けるのだった。
彼は空が茜色に染まるまで、正確には痺れを切らせた誰かが迎えに来るまで、ここにいる。そして、朝日が昇ると再びここへ降り立つ。
青年はこのコンクリートに落書きをしたような箱に毎日通っているのだ。何をするでもなく、ただ居るのだ。
何度も彼を迎えに来ている青年の兄は、その様子をこう表現した。
明けの明星を待つ宵の黒星、と。
Fine.
PR
この記事にコメントする