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2010.12.17 【就】
Novel Stage / Fun Fiction:LoV
《舞い降りた死の使者》
本来の主を失いばさばさと舞い上がった三頭の飛竜と断罪の天使がエルムより少し離れた上空で集結する。
大きな翼の音に邪魔をされつつもいくつか言葉を交わし、準備を終えたところで四対の翼が永遠の夜の終わりを告げるべく赤い空へ舞う。
滑らかな曲線を描く大理石の浴槽。中には溢れ出さんばかりの真紅の液体が満ちている。
ちゃぷ、と指先で液体を弾くのは笑みを浮かべてその中に浸かる女性。
緩くカーブを描く藤色の髪は豊満な肉体に沿って流れ、白い肌はアラバスターのように細かく染み一つない。細められた瞳と妖艶に笑みが描かれた唇は肌と対照的に液体の上へ散らされた薔薇のように紅い。
そっと腕が赤い液体から上がる。
白い肌を伝った赤が滑らかに滑り落ち、女性が満足そうに嗤う。
「ふふ……」
しかし、優雅なバスタイムは急に響いた足音によって終わりを告げた。
「ロード」
短く薄い赤の髪をした女性、腹心職に就くヴァンパイアがブーツの音も高らかに入ってくる。黒いレザーのキャミソールとショートパンツ、ロングブーツの太腿部分は大きく開いていてメッシュが白い肌を覆っている。
応える女性は不機嫌を隠そうともしない。
「あら、なにかしら」
「調達に行ったアンデッド達が帰らない。代わりにワイバーンが乗っ取った何者かが、今城へ攻撃をかけて来ている」
淡々を告げるヴァンパイア。その表情に浮かぶのは呆れの表情。
つまり、なんという愚かな手段を、だ。
それは声をかけられた女性も同じで、不機嫌さを一転。赤い唇が弧を画く。
「今攻めてこようなんて思うのは南から迫ってきている人間のロードね。ルクサリアを突破した方、それともアケディアを突破した方かしら」
くすり。微かに赤い三日月から声が漏れる。
「どちらにしろ、愚かだわ」
しかし、興味を引かれたのか女性はバスタブから身を起こす。僅かな粘性をもって赤い液体が白い肢体から流れ落ち、紫の豊かな髪が片手でかきあげられると、名残の飛沫が周囲に飛び散った。
「でもロードとあれば、ロードたる私直々にお相手しなくてはね」
怯える人間の侍女達に着替えを命じながら彼女はヴァンパイアに出撃準備を指示した。
「このヴァンパイアロードが」
黒いロングマントをはためかせて、女性は悠々と歩き去った。
「砕けるがよい!」
「雷よ!」
低空で飛ぶワイバーンが過ぎ去り際に光の球が城壁を掠めるように吹き飛ばし、雷が天空から落ちた。その上をもう一体の飛竜と白い翼を持つ天使が飛んでいく。
真っ先に飛んでいく飛竜は多くの骸骨が放つ矢を掻い潜り、王城へと真っ直ぐに突き進んでいく。それは非常に手馴れた操作。
「結構慣れてるんだねー」
漆黒の錫杖を振りかざし、進行方向にいる骸骨を闇の刃で吹き飛ばしながらルヴニールが騎手であるカイムへ尋ねる。闇の力は不死に致命的な打撃は与えられないがこちらは飛行している。ようは通り過ぎるまで行動不能にすればいいのだ。
「こういう経験、あるのー?」
普段なら無駄話として返事は帰って来ないことが多い。だが、今回ははっきりと答えが青年の頭の中に響いた。
『……こうして戦うのが当たり前だった』
一瞬だけロードの脳裏に過ぎったのは真紅の竜。飛竜より一回り以上は大きく、力強く天を駆ける様は繊細とはほど離れているはずなのに美しい。
『それに……あれを乗りこなすのはこんなに簡単ではない』
「そっか」
ほんの瞬間だけ過ぎった光景を見てなんとなく納得。その間にも行く手の敵は段々増えていき、合流する他の二頭に載ったシャーマンやオークオラクルも撃退側へ加わるが余りにも数が多い。
更に、直接飛竜へ攻撃を加えようとする死霊達を薙ぎ払っていたパワーズが王城を指し示す。
「ルヴニール、あれを」
剣の先にあるのはエルムの突端に位置するバルコニー。
全身が青く両腕の先が魚のヒレの様になっている女性と、爪を長く伸ばし露出度の高いレザーを纏った女性。
その二人を従えるのは蝙蝠の翼のようにロングマントを広げたウェーブのかかった紫色の髪、赤い瞳の女性。露出度は控えに回っているヴァンパイアよりもより高く、胸元から局部にかけて申し訳程度に覆っているだけだ。例えハイレッグの水着でももっと被覆範囲は多いだろう。
「ようこそ、人間のロード! 私の居城に随分と派手な乗り込みを仕掛けてきたものね!」
「だーって門開いてくれないからー」
青年は男性の背に掴まりながら立つと、普段と変わらぬにこにことした笑顔で女性に応える。
「それで、あなたは誰かなー?」
「私はヴァンパイアロード。この地、この王国を統べる夜の女王! 門番にロードであることを告げれば直だったものを、あえて空から来た愚鈍さを思い知らせてあげるわ!」
浮き上がりその手に炎を宿らせる吸血鬼の女王。呼応して背後に控えたミズチとヴァンパイアも闇の力を迸らせる。
だが、青年の反応は簡単なものだった。
「ふーん……」
いかにもつまらなさそうな表情で、漆黒の錫杖を翳す。そして仲間達へと告げた。
「いつもどーりやっちゃっていいよー……この人、アルカナ持ってる人じゃないからー」
To be continued...