365 letters 2010.12.16 忍者ブログ
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2010.12.16   【臣】

Novel Stage / Fun Fiction:LoV

《黒き翼》


 


 

 今日も今日とて腐った死体がのったり道を歩く。
 痩せ細った、ではきかない骨がかしゃかしゃと足音を立てる。
 その上空からは炎を吐く飛竜に乗った下級家臣であるヴルコドラクが、上空からアンデッドの軍団を見張り、時折自身も参戦する。
 王都エルムの近隣ではすっかり見慣れた光景だ。
 しかし、人間にとって悪夢でしかない日常は何故か打ち破られることになった。

 王都の東側に向かった部隊。
 手頃な村を見つけたアンデッド達が大挙して襲い掛かる残虐な光景を満足そうに腕を組んで見守るヴルコドラク。
 しかし、その足元から唐突に赤い光が生じた。
「つーらーぬーけっ!」
 振り上げられた漆黒の錫杖。同時に赤い光は黒い水晶状の刃となって、二メートル近い長身を貫いた。
 どんなに鋭い爪を持っていようと足元からの攻撃は防げない。それがこっそり気配を殺していた青年による攻撃であればなおさらのことだ。
 見張りの苦痛の声によってアンデッド達が振り向いた時には既に遅い。
 飛竜の周囲は天から降り注ぐ黒い剣によって大地ごと抉られ、その隙に黒翼の男性が一気に飛竜を制圧する。まるでよく知っているかのように的確な一撃が、ワイバーンの反抗する気力を全て奪っていく。
 完全に服従させた隙に男性に続いてルヴニールも飛び乗る。肩に乗っている小悪魔が落ちないよう小脇に抱えてしがみつくと同時に飛竜はカイムの指示通り高く高く舞い上がった。
 あとに残されたのは、乗り込むまでの僅かな時間に小悪魔の応援で充填された力を使って再び打ち出した水晶状の刃に抉られたアンデッドの軍団。
 巨大な二回の闇の刃はその大半を地へと還していた。

 王都の西側へ向かった部隊。
 次の村への距離は遠いが、疲れ知らずの肉体で歩き続けるアンデッド達の前に、立ちふさがった一つの影。
 一対の長刀が胸の前で交差され、集中された精神と呼吸が見張り役であるヴルコドラクをも巻き込んで炸裂する。
「……おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉおぉぉっ!!」
 自身と周囲を鼓舞するウォークライ。極限まで高められたその呼気は空気を振るわせるだけでなく、振動に触れた全てのものをもびりびりと振るわせるほどに高まっていた。脆い骨などそのまま砕けていく程の衝撃だ。
 全体の動きが止まった僅かな瞬間にヒルデガルドは走り出した。
 一対の長刀は当るに任せて腐った肉も骨も切り裂き、時には大地をも抉りつつ上空から目に見えてわかるほどに道を切り開いていた。
 真っ先にマヒから復活したのは目付け役のヴルコドラク。
 鋭い爪を振りかざして邪魔者を討伐しようと飛竜から飛び降りた瞬間。
 ばしぃん!
 一筋の雷が鉄の爪とトゲトゲのショルダーガードを通じて長身を駆け抜けた。それも立て続けに数発。
 眩い光が迸るたびにびくびくと体が大きくしなり、やがて収まった。大地に倒れ伏した黒こげのマスクに覆われた口から白い泡が溢れ出した。
 木の上でタイミングを計っていたシャーマンの少女はひょい、と身軽に飛び降り、漸く咆哮とでも呼ぶべき衝撃から復活しつつある飛竜の背に乗って杖を押し付ける。
「振り落とそうとしたら、うちますわよ」
 ぴり、と弱い電流を流されたワイバーンにはそれ以上反撃できるだけの機会はなかった。
 その場のアンデッド達は前門の一対の長刀か後門の飛竜の炎という究極の二択を迫られることとなる。

 王都の南へ向かった部隊。
 ルヴニール達が拠点としていた街は他の街と比較すればまだ希望を持っていて、自衛の為の強者や超獣、魔種すら滞在しているものもいた。魔界王国から蝿の女王の支配に嫌気がさして逃れてきた者達らしい。
 多くのアンデッド軍団が来てもそう簡単に崩れはしない。つぎつぎと死体は大地へと還されていく。
 だが、それをお目付け役のヴルコドラクが見逃しているわけもなかった。
 炎を吐きつける飛竜と共に街を囲う壁へ一撃を加えようとした鉄の爪に。
 影が、落ちた。
「裁きを受けなさい」
 急遽援軍として呼び出された断罪の天使が飛竜の更に上空で真白の剣を構えて、振り下ろした。
 純白の輝きが半円の弧を描くと赤に包まれた頭部が切り離され、純白の盾に突き飛ばされて残った胴体が地上に墜落する。
 主を失ったワイバーンの前には白い翼を持つパワーズの鋭い眼差し。
「救われたければ、私に従いなさい」
 答えの代わりなのか、威嚇するように炎を吐き出す飛竜。その次の瞬間、ルビーのような紅玉の瞳の数ミリ前に剣の切っ先が突きつけられている。
「次は、ありません」
 その時には地上のアンデッドも粗方掃討されていて、ワイバーンは僅かな逡巡の後、大人しくその翼をたたんだ。
「……さて、これでいいのかしら」
 空の向こうにいるはずのロードに向けて、彼女はポツリと呟いた。


 To be continued...


 

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