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2010.2.7   【発】

Novel stage / Fan Fiction:LοV

《発せられた声》


 




 彼は闇の中で目を覚ました。
 虎が倒れたところまでは見届けて、後の記憶がない。
「……夢、か」
 その唇から、初めて言葉が紡がれる。この事実がここが現ではないことの証。
 人は死ぬ直前にも夢を見るという。その類のものだろう、と彼は考えていた。
 すると、唐突に漆黒の闇の中で白い影が現れた。一部血に染まってはいるが白い外套に白い髪。
 最初に襲われて、最後に止めを刺した名も知らぬ青年。
「やあ。ちゃんと話すの、初めてかな」
 今まで見たものと比べて、陰りのある笑み。
 彼の意識がある間は確かに生きていたが、もしあの後に状況が変わったとしたら。
「死んだのか」
 そう尋ねると、青年は首を横に振る。
「二人のおかげで私は生きてる」
 でも、と言葉を繋いだ。
「私は二人にとっていいことをしたのかわからない」
 青年の言葉を彼は不思議そうに聞いていた。青年がしたことで、彼の不利益になるようなことはなかった。
「……どういう意味だ」
「私も全部はわかってないんだけど」
 彼の問いにぽつぽつと語り始める。二人の出血量が多く治癒が間に合いそうになかったこと。ノイズの声が告げる助ける方法とやらに半ば強制的に従わされたこと。
「その方法が、私が二人それぞれと契約を結ぶこと」
「契約……」
 ほぼ何も言わない彼に青年は説明を続ける。一言一言、懸命に思い出しながら。
「私が滅びない限り契約を交わした者は滅びない。でも、私が滅びた時には契約を交わした者全てが滅びる。要約するとそういうことみたい」
 そして、言葉を発しない彼へ。
「ごめんね。勝手にこんなことして。確認もしてないし、解除する方法もわからない。でも……」
 ぺこん、と頭を下げる。
「生きてる方が絶対いいから」
 そのまま、何も起こらない時間が過ぎて。
 ぽん。
 彼は下げられた頭を軽く叩いた。
「これでイーヴンだ」
「ふぇ?」
「助けて、助けられて。等価だろう」
 青年が軽率であったことは否めない。けれど、その行為に悪意はなかった上に強制されたものだ。
 責めるべきは青年ではない。
 すると頭がおそるおそる上がって、その表情は照れたような笑みになっている。
「……ありがとー」
 その言葉と同時に青年の姿が揺らぐ。
「ああ、君が起きるんだねー」
 揺らぎは細かいものから大きいものへと代わり、薄く薄く闇へと……。
「待て」
 消える寸前に彼は青年へ声をかけた。
 ただの夢かもしれない。けれど、現実世界に戻ってしまえば言葉は伝えられなくなる。
「契約というならこのくらいは告げよう……我が名はカイム」
 その言葉が聞こえたかは定かではないが。
 薄れた姿は頷いたように見えた。

 意識が覚醒した時に聞こえたのは、夢と変わらぬ青年の声。
「おはよう。カイム、ヒルダ」


 To be continued...


 

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