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2010.2.5 【血】
Novel stage / Fan Fiction:LοV
《終わりを次げる迷い人》
「ワータイガー、だと……」
呆然と呟いた女性は片手に愛用の刃を構え、もう片方の手で男性が背後に庇う青年を引き寄せる。
「あれの強さは半端なものではない。気をつけろ」
男性へ注意を促しながら、女性は青年の様子を窺う。
深く抉れた胸部からは鮮血が溢れ出して止まらない。当に気絶しているかと思えば、その瞳にはまだ焦点が灯っていた。
「……いたい、なぁ」
彼は、ぽつり、と呟いた。
こんな言葉さえ笑みを浮かべているのに、女性は苦笑した。
「そう言っていられる間は平気だな……もう少し持たせろ」
そして彼女は立ち上がると、一対の刃を持ち直す。
「お前の生息地域は山一つ越えた向こう側のはずだ……なぜここにいる」
問いに返ったのは、低い唸り声。
目の前に立つ二人が呼応するように剣を構える。
合計三本の刃に狙われようとも、虎頭の人間はまったく怯む事もなく。
目の前の人間を引き裂き喰らい尽くすことのみに集中したその様子は、冷静なのか狂っているのか。
があああああぁぁっ!
猛々しい叫びがその鉄爪に更なる力を与え、一気に振り切られる。
避けあるいは受け流そうとした刃は……力も速さも増した爪に対応しきれない。
長剣は流され、一対の刃が押し返される。
だが、その使い手もまた普通の使い手ではなかった。
ざくざくざくっ!
押し返された刃は途中で向きを変え、弾かれたように虎頭の両脇、即ち両肩へと食い込む。そして流された長剣が流れるままに切先を天へ向けると紫水晶の輝きを放つ黒き剣が幾本も現れ、吸い込まれるようにその胴体へと。
ぐがぁああぁっ!
自らを鼓舞する咆哮とは違う、苦痛を訴える叫び。その肉体の大半を削り取る。
無論、代償がなかったわけではない。
「……ぐっ」
女性は胸部の傷がもう一筋増え、溢れ出た血がその身を赤く塗らす。
一言も声を上げない男性も両の腕を深く切り裂かれていた。
共にかなりの出血となっている。
狂気ゆえか、それともその体力ゆえか。
真っ先に動いたのは虎頭。
再び咆哮を上げながら二人へ突っ込み、爪を振るう。その胸板に。
どす。
二人の後ろから、錫杖が突き出された。
既に惰性で動いていた獣人は力尽き、どぅ、と後ろへ倒れこむ。
血だまりが広がる水場。最後に立っていたのは、最初に倒れたはずの青年だった。
To be continued...