365 letters 2010.12.28 忍者ブログ
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2010.12.28    【撲】

Novel Stage / Fun Fiction:LoV

《予期せぬ遭遇》


 


 

 イーラを覆う『憤怒の結界』の発生源。
 切り立った断崖の上にある神殿にはのんびりと寛いでいるルヴニールと警戒心も露に周囲を寄せ付けないリシア。そして二人を強引にさらってきた鋼色の翼を持つ美しい女性の姿をした魔鳥。
 闇の中でしかあったことのなかった青年と少女は、セイレーンによって予想もしなかった場所で初めて直に顔を合わせることになった。
 先に連れてこられたルヴニールは気が付いた時点では既に空の上だったこともあって混乱時間は短かった為、既に緊張をほどいて通常通りだ。もっとも、彼にとって異世界へ連れてこられたこと以上の意外性はそうそうないということもあるのかもしれない。
「あらら。肩結構がっちりいっちゃったねー」
「落ちるより、まし」
 魔鳥は少し不満そうに青年の言葉へ返す。両腕が翼となっている上、単独でそれぞれの休憩地を襲ったので彼女は他に二人を運ぶ方法がなかったのだ。
「何のつもりでこんなことを」
 両肩に食い込んだ猛禽の爪の痕から血をだらだらと流しつつ、少女は紅い瞳をセイレーンへ向けた。
 応えて魔鳥が口を開こうとしたのだが、それを遮ったのはルヴニールだった。
「お話しながらでもいいけど、怪我、応急処置位させてくれないかなー。ちょっと深い気がするんだよ」
 リシアの視線が今度はルヴニールへと向けられる。ほとんど睨みつけるような眼だったが青年は動じずにこにこと笑顔のまま。
「……勝手にすればいい。話は続けて」
 少女は押し問答するより時間の方が惜しいと判断した。彼女にとって、彼はここまで勝ち抜いてきたことは評価しても決して頭のいい存在ではなかった。少なくとも邂逅した闇の中では。
 それに理由を持って二人を連れてきたのなら、青年が少女へ危害を加えようとすればセイレーンは阻止する側に回るだろう。
 リシアは肩に当てていた手を離した。後ろへ回ったルヴニールが肩当や布の残骸を取り除くと抉れた肉の上に手を翳してそっと呟いた。
「いたいのいたいのとんでいけー」
 青年の治癒能力はあればまし、程度ではあるが傷口自体は小さくなっていく。もとより、全快というよりは止血が目的だから問題はない。
 その様子を見ながらセイレーンは告げた。
「この下、樹の根元にイーラのロードいる。結界の源でもある」
 片言ながら語られた内容に二人が目を見張る。ロードである二人の次の目的は正にイーラのロードだった。
 確かに彼女たちの足元から立ち上る気配には瘴気だけではなく強いアルカナの力も混ざっている。
「それを教える為に私たちを連れてきたのかなー?」
 ルヴニールの言葉にセイレーンは頷く。彼女は更に下へ向かう階段と、最下層まで行く道程において気を付ける点まで伝えたのだ。
「何故そこまで詳しいの?」
 少女は疑問の目を向ける。ロードがお互いに感じる気配でも細かい場所や構造まではわからない。女性は何でもない事のように答える。
「セイレーンはロードの使い魔。だから、場所も知っている」
「じゃあ、なんで教えてくれるのかなー?」
 青年がそう尋ねると、セイレーンの眼はリシアへと向いた。
「セイレーンは知っている。リシア、お前も、お前の父親も、兄も」
「!?」
 少女が勢いよく立ち上がる。その弾みで肩に当てられていた青年の手が治りかけの傷に当たった。
 苦痛で反射的に跪く。
「リシアちゃん、落ち着いて落ち着いて」
 だが、青年が少女を支えて癒しの力を注いでいる間にセイレーンは両腕の翼を強く羽ばたかせる。
「セイレーンはここまで」
「……っ。待て!」
 だが、リシアには空を飛ぶことはできない。ただ鋼色の翼が空へと消えていく様を見守るしかなかった。
 更にいきり立つ少女を宥めたのは治療中の青年だった。
「私はリシアちゃんが何のために戦ってるのとか、なんでそうしようとしたかとかは知らないけど、今やらなきゃいけないことは結界の解除だよね?」
「それは、そうだが」
「なら、セイレーンを追いかけるより下に行かないー? 二人がかりならロードを撲殺も可能だと思うんだけどなー」
 怪我を治しつつ楽観的な発言をするルヴニール。
 少女が聞いてもまったく根拠がないように思われる上、二人ともロードであるということをすっかり忘れている。
「……何故私達が協力しなければならない?」
「敵の敵は味方って言うじゃない。それに、私が敵に回るつもりならとっくに後頭部が打撲傷でいっぱいになってたと思うよー」
 どうしてこの男はいい加減な言葉と正論を織り交ぜて発言するのだろうか。
 リシアにとっては非常に理解しがたい相手であったが、結局押し切られる形で二人は遺跡の最深部へと進むことになった。


 Fine.


 

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