365 letters Valentine's Day 忍者ブログ
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 本当はバレンタイン用にきっちり完成させる予定だったのですが、思ったより長くなりそうなので前後編に。

 一番甘そうなところ、ということでととモノ。から引っ張り出してくることにしました。

 お題の方で何度か出てきた子達です。


 《99%の鈍さと1%の優しさ》(前編)

 Novel Stage / Fun Fiction:剣と魔法と学園モノ。


 後編はこちら



 

 太陽が天に浮かぶ短い時間を終えて、その身を大地の裾野に沈めようとしている時。地上には深々と雪が降り注いでいた。
「待っていても彼は気付かないと思うわよ」
「いいの。あたしが待ちたいからいいの」
 肩や帽子に数センチの雪を積もらせながら膝を、いや、荷物を抱えて階段に座り込むクラッズの少女。露出している部分の肌は赤く、小さな身体はもう震えさえしない。
「きっと今日が何の日かなんて覚えてないもん」
俯いたまま、傘を差して側に立つ水色の髪の少女へ上手く動かない口をどうにか動かして呟く。
「知りさえしないかもしれないわね」
 寒さにも変わらない表情でノームの少女は応え、その言葉にそっとユノは頷いた。
「うん。だから、あたしが待つの」
「そう……あなたがいいなら、それでもいいけど」
 立っている少女、カゲロウはすっかり冷え切ったユノの小さな手を握って、滅多に浮かべない微笑を浮かべた。
「もっといい方法があるわ。あなた達らしい、ね」


 訓練用の刃を潰した片手用の長剣を持ったフェルパーの少年が身を沈め、剣の側面に手を添えて身構えた。直後、バハムーンの少年が構える訓練用の両手剣が鈍い音を立てて叩きつけられる。
 本来斬るというより叩き潰すことを目的としている両手剣は、訓練用であってもその重量は比較にならない。また使い手も竜の血を引くと言われる筋力や体力に優れた種族だけあって武器と自身の特徴を最大限に引き出していた。
 腕が痺れる程の衝撃をいなしてザクスは飛びのいて一気に距離を開ける。膂力や体力では敵わないが、少年の長所はそこではない。
 片手で振れる長剣を用いる理由のひとつ。
 相手が振り下ろした両手剣を構え直す間に空いた手を軽く床につけると脚に力を篭めて一気に駆け出す。それは開いた距離を詰めて余りあるだけの加速を生み、構えの横から軽く薙ぐ。
 予想して両手剣で受け止めたカースエント。だが反応も予想していたザクスはその反動を利用して合わせた剣を引いて、ステップを二回。再び駆け出して側面からの攻撃を繰り出した。
 辛うじて剣のぶつかり合う鈍い音。ザクスの瞬発力、素早さが優れていることもあるが、両手剣はその重量ゆえに引き戻し、構えるまでの時間がかかる。
 更に繰り出される連撃をカースエントが腕力と重量で押し返して弾き、ザクスは距離を取って再び走り出す体勢を取る。
 その様は見事にパワーファイターとライトファイターの対比とも言える。
 弾き。走り。振り。受け。
 近付いては離れ、離れては近付く剣の打ち合いは二時間近くも続き、他の生徒と替わりに訓練場の壁際へと下がる。
「二人ともお疲れ様だよー」
 一緒に地下道を探索することも顔を合わせることすら少ない二人を含めて、自分が探索に同行した数人を訓練に誘った張本人であるアランヴェールがタオルと水を差し出した。
 受け取ったカースエントは汗を拭い、軽く笑いながらザクスを振り返る。
「偶には違う奴と手合わせするのもいいものだな」
 同意見であったフェルパーの少年も頷いた。彼が普段地下道へ向う際同行するメンバーにはカースエントのように力技を得意とする仲間はいない。全員身のこなしが軽く瞬発力に優れ、また探索に必要な盗賊技能を持つ者も多い長期の探索に向くパーティだ。
「こういうのも面白いと思ってたんだよねー。でも今日しか予定合わなかったからすごく野暮な気がして仕方がないんだよー」
「野暮?」
 二つ並んだ疑問符を浮かべた顔にアランがひとつ溜息をつきつつ肩を竦めたその時だった。
「ザクス」
 訓練場に二人の少女、カゲロウとユノが入ってきた。カゲロウは学園の制服の上にコートを羽織って鞄を抱えた寮へ戻る途中の格好だが、ユノはコートの類をまったく着ていない制服姿のみ。それどころか片手に一本ずつ刃を潰した訓練用のナイフを握っている。
「あたしとも、手合わせしてくれない」
 少し怒ったようにも見えるほど、クラッズの少女の表情は真剣だった。
 名指しされたザクスは驚いたように彼女を見、カースエントとアランヴェールは顔を見合わせた。カゲロウは既に承知していたようでまったく表情は動かない。
「駄目かな?」
 許可を求めているように聞きながらも口調はかなり強めだ。
「……いや」
 ザクスが承諾するのを待ってカゲロウが現在訓練中の生徒達へ掛け合いに行く。
 その間、少年の中にあったのは戸惑いの感情だった。笑うでもなく、怒るでもなく、ただ静かに真っ直ぐ見上げるユノの表情というのはほとんど見た事がない。ころころ表情が変わる天真爛漫な少女、それがザクスがユノに持つ印象だ。
 実際彼女の普段の様子を知っているカースエントも非常に複雑な表情をしている。
 今日会っている限り特に変わった様子はなかった彼女に何があったのか。
「……ねえ」
 視線をカゲロウの方へ向けたままユノが言葉を発した。少年が視線を向けても顔の向きは変わらないが言葉は続く。
「ひとつ、賭けてもいいかな」
「何を?」
「もしあたしが勝ったら、お願いをひとつ聞いて欲しい。ザクスが勝ったら、あたしがひとつお願い聞くから」
 やはり様子がおかしい。ザクスはそう感じた。
 普段のユノであれば願いがあればこんな回りくどいことはしない。願い事なら結果がどう見て取れようとも直接ぶつけてくるだろう。
 それでも。
「……わかった」
 彼女が望むなら少しくらい付き合おうと、フェルパーの少年は承諾の意を返した。


 To be continued...

 

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