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2010.12.1 【雪】
Novel Stage / Fun Fiction:LoV
《別れ雪》
国内に溢れかえっていた魔種は、統率者を失ったことで魔都と同様、いや、範囲が広い分それ以上に乱れ、まがりなりにも打ち出されていた秩序などどこかへ消えてしまっていた。
蝿の女王の庇護がない状態での弱肉強食がそこにあった。
強い者が上に立つ。そんな単純構造。悪魔の寵を得るために人が人を狩ることすら、未だ完全には収まらない。
「まあ、これはこれであるべき姿なんだろうねー」
身にかかる火の粉を振り払ったルヴニールの一言が、なにより彼らの態度を物語っていただろう。
魔都を発ってから数日。
今彼らは長いこと夕暮れ色の結界によって閉じられていた憤怒王国、イーラとの国境沿いまで来ていた。
イーラの巨壁。
イーラ王国と他国を遮り、ない場所は大塩湖のみ。その湖は既に凶暴な生物達の領域下に入っている。これもまたイーラと他国を遮る要因であったのだ。
蝿の女王まで同行させて貰った礼にと、猿田彦は自らの知るイーラへの抜け道を教えたのだ。ただし、今も使えるかどうかはわからない、という条件付きで。
幸い、シャーマンやオークオラクルが見たところでは直に崩れるようなやわなつくりはしていなかった。
「さて、別れだ。ここを抜ければ王都への道が開かれよう」
「ん。ありがとねー」
にこにこと笑顔で手を振る青年。未だにその内で抱えた闇の正体ははっきりしないが、支える役目はおそらく自身にないことを猿田彦は悟っていた。
不安はある。しかし、彼の信頼する友人が最後まで信じたのだから、最後まで信じてみようとこの神は決めたのだ。
「何。これからもまだ大変だぞ」
「いくら言っても、ルヴニールは引きませんから」
シャーマンが微笑んで答える。他の者達もそこまではっきりとは思っていないが、止めても無駄だ、くらいには思っているように見える。正直、猿田彦も同意見であった。
「ならばせめて、道行の幸運を祈るとしようかの」
神様が?
そうルヴニールが口にしようとした途端。ふわり、と白い欠片が風に乗って運ばれてきた。
あの時、わだつみとの戦いで幾重にも舞い上がっていた欠片が。
「……そなたも見送るか。我が友よ」
わだつみは海神。猿田彦は先導する神。旅路の船出を見送るには他においていない神々だ。
一瞬、きょとん、として言葉を言い損ねた青年は一度口を閉じた。
そして、改めて巨壁を超えるための通路へ身体を向けると水兵のように指を揃えた掌を額にぴっと当てて。
「出発、しんこー」
ぶん、と行き先に向かって腕を伸ばした。
To be continued...