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2010.11.16 【縁】
Novel Stage / Fun Fiction:世界樹の迷宮
《袖すり合うも他生の縁》
その影が横を通り過ぎた瞬間。
ふわり、と優しい春の風の香りがした。
街の中心にある広場では多くの人が通りがかる。彼もまた広場を通りがかり、そして噴水の側で休憩していた一人だった。
涼やかな飛沫が周囲の気温を下げていて研究に疲れた頭が冷えていく。
そろそろ理論だけでは厳しくなってきた。
部屋の中だけでは思考も行き詰ってしまう。実際に使い、影響を見る。想定と何が違い何があっているのか、
実際に試してみなければわからない。かといって戦闘に関するスキルは研究していた錬金術のみ。
冒険者ギルドあたりに登録して人を募る必要があるだろう。
人付き合いは苦手だが、ビジネスライクな関係で十分だ。
そう考えていた時のことだった。あの緑の香りがしたのは。
目の前を見ているようで見ていなかった意識が一瞬で覚醒する。既にその香りの主は目の前から消えてしまっていた。
見回したがもともと見ていなかった人影だ。例えその場にいたのだとしても彼にわかるわかるわけがない。
ただ、香りが途切れるわけではない。
ほんのりと漂うその気配は、意外なことに自分が向かおうとしていた冒険者ギルドへと向かっていた。
まるで誘われる様に、ふらり、と立ち上がった。
もしもこの春の風と共に旅が出来るのだとしたら。
その旅は研究とは別の意味で、意義があるのかもしれない。
Fine.
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