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2010.11.18 【物】
Novel Stage / original:Absoetia
《不吉な予感》
諜報部隊の活躍によって敵国の砦は丸裸にされ、暗にそのことを仄めかされた砦の参謀役は震え上がった。アブソエティアの情報収集能力の高さは知っていても、実際にぶつけられた時の恐怖はまた違う。
そして彼らが用意していた切り札も読まれていることも彼は危惧し、指揮官へと進言。これ以上の被害を押さえるために引くか、なんらかの打開策の必要性を説いた。
だが、僅かに上回る兵数に指揮官は驕った。
通常戦闘で勝てるのならば、切り札を切る必要はない。ならば、兵数で勝るこの砦は負けるわけがないと。
こうして、戦闘は隣国の奇襲を持って始まった。
もちろんキルシェ達"杭"が奇襲の情報をつかんでいないわけがない。アブソエティア側は侵入ルートまで抑えていて、迎え撃つ態勢まで整えていた。
もはや戦闘ではなく、ただの一方的な殴り合い。
隣国の治安がアブソエティアより悪いとはいえ、兵士たちの練度にはそれほど差はない。つまり質の高い指揮官を有する軍隊が勝つ。
そして、質においては参謀の言葉も聞き入れられない隣国の指揮官と、理論・実践を兼ね備えた指南役に学び自分からこの作戦の元を作り上げられる王子では差がありすぎた。
そより。
敗北を悟った敵兵たちが慌てて逃げかえる中、ラートは不自然な風を感じた。砦の廊下という場所にもかかわらず、上から下へと吹き抜ける風を。
青年は無言のまま眉をひそめる。
物理法則ではあり得ない自然現象を起こすのはアブソエティアの王族もしくはその血を引く者。そして王族であるテルマ王子はまだ能力の覚醒を迎えていない。姉姫の発現もなかったことから、このまま身につけないのではないかという危惧もある。
つまりこの場で物の理を操れるのは戻ってきているはずのキルシェのみ。
だが、彼はめったなことで理師としての力を使わない。特に敵国との交戦時には極力使用を控えている。顔を知られると"杭"である青年は仕事がやりにくくなるからだ。
「ラート」
同じ事に思い当たった王子が厳しい表情で言う。
「行って。何かあったんだ」
「……お任せください」
王子の側にはまだ他にも騎士たちが残っている。何人かは敵兵の多い部分へと赴いたりもしていたが、彼らの仕事の根本は王子を守ることなのである。
だから青年は王子の元を離れた。一人で戦わなくてはならない友人の元へと。
目指すは砦の最上部。見張り櫓にあたる部分。
Fine.