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2010.11.14 【蒼】
Novel Stage / Fun Fiction:Summon Night 2
《外側から見た歪な歪》
蒼。
突き抜ける濃い空の蒼天。青々としげった蒼樹。どこまでも広がる蒼海。
色が持つイメージは時の侵蝕を受け付けない、漆黒にも似た孤高なる存在。
もし、この場所が"そういうもの"だとして名付けたのだとしたら、ソイツには現実が見えていない。
ただ研究に打ち込んでいようが人間は人間。何が消えるわけでもないというのに。
召喚師の二大派閥、蒼の派閥の中庭。
山賊退治へ向かうまでの僅かな時間を利用して、愛用の大剣を背に大分育った子供が木陰で眠りこけていた。
少し前、彼が召喚師になるまではよく見かけた光景だが、なんだかんだと任務を押し付けられている今となっては久しぶりの昼寝だ。
しつこいくらいの仕事に含まれた悪意も知らないように見える穏やかな寝顔が程よくぬくもりのある空気に包まれていた。
大きな子供、と言われるの相応しい姿。
彼とて何も気付いていないわけではないのだろう。皮肉なことに、子供と悪魔ほど悪意に敏感な者はいない。もっともそんな姿を見せないことが、大きいということなのだろう。
そんな彼の元へ近付く一つの影。
細身だが理知的な容貌が彼よりも年上の雰囲気を感じさせ、実際にも大人とまでは言わないが彼よりはいくつか上だろう。
手には姿を裏切らない召喚師が魔力の媒体とするための杖と旅装が二つ。
新たに現れた青年は一つ溜息をつくと、荷物の一つを無防備に地面で伸びている腹部へと落とす。
どすん。ぐぇ。
着地した音と同時に蛙を踏み潰したような声が上がった。流石に目を覚ますと荷物を抱えながら起き上がり文句を言う。即座にその倍以上の言葉が小言として返されていた。
いちいち正論だったのだろう、どことなく凹んだ雰囲気のある彼が立ち上がって先を行く青年の背を追おうとする。
ここを見るだけなら何の違和感もない。小言にしてもお互いの信頼関係が築かれた上での注意だ。別に虐めでもなんでもない。
本部の庭と言う人通りの絶えることのない場所にあって、通りがかる召喚師が視線すらむけずに無視していることを除けば。
好意の反対は悪意ではない。愛情と憎悪が両立できるように、この二つは似て非なるものであって対ではない。
関心を向けないこと。手を出していないのだから自分は関係ないと言い張る輩。この方が悪意よりも性質の悪い、好意の対。
研究者と言えどもこんなものだ。人間であることを捨てられる者等そうそういない。恨みも妬みも逆恨みもてんこもり。
だからこそこの場所の居心地は悪くない。空虚な空気の中に時折生まれる悪意も、無意識にぶつけられた無関心によって傷つく様も非常に楽しい。
ああ。向こうで俺を呼んでいる。
折角楽しげな場所に召喚してくれやがったんだ。少しぐらいは手を貸してやるとしよう。
俺が楽しんでいる間くらいは、な。
Fine.