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2010.11.20 【偽】
Novel Stage / TPRG:Double Cross 3rd Edition
《始まっていた非日常における日常の一幕》
ポーン。ポーン。
今日も学校のチャイムが授業の終わりを告げた。
いつものように教科書を全て鞄へ詰め込みながら、前の席にいる幼馴染へ声をかける。
「それじゃ、まゆ。また明日」
「うん。また明日」
明るい声で彼女は振り返って頷く。その鞄は机の中から覗く教科書やノートを持ち帰る事がないせいか僕のものより小さい。
「あ。きらにも言ったけど、明日は買物あるから帰り付き合ってね」
「大丈夫。忘れてない」
「うん。あきはあんまり心配してないけどね」
座ったままじっと見上げてくる笑みを含んだ表情へ笑いながら返して、僕は鞄を肩に掛ける。
「そうだ、まゆ。流石に化学は持ち帰ったほうがいいと思う。授業振り替えで明日の五時間目に入ってるよね」
化学の教師は毎回それほど難しくはないが課題を出してくる。提出は次の授業の開始時。
「げ!?」
まゆは今終わったばかりの授業の教科書を慌てて引っ張り出し、勢いがよすぎて他の教科書やノートまでひっくり返す。どさどさと重そうな本が床のタイルへ落ちる音と。
「……ったぁいっ!」
足の上に落としたまゆの悲鳴が教室に響いた。
「ま、まゆ、大丈夫?」
「へ、へいきっ! へいきっ!」
言葉では意地を張るが眉をしかめて足首を押さえる。
「大丈夫そうに見えないよ」
僕が遠慮するまゆの手を掴んで支えようとすると、横からの手がやんわりと抑えた。無表情のきらがぽかんとしているまゆを何も言わずに抱えあげる。
そのままかたまった生徒達の間を人一人抱えているとも、机が疎らに並んでいるとも思えないほどあっさり保健室へと向かう。
「き、きらっ!?」
漸く状況を認識できるようになったまゆの声を遠くへ聞きながら、僕はまゆの勉強道具をまとめてきらを追った。
ぱたん。保健室の扉を静かに閉めた。
「まゆ、何事もなさそうでよかったね」
一緒に出てきたきらへ言うと、頷きもせずに視線だけで返してきた。
そして。
「……指令が出た」
ぽつり、と呟く様に零れた言葉に僕は向けた視線を落とした。
「……そっか」
僕もまた、ぽつり、と呟いて。
「なら、早く済ませよう。まゆが出てくる前にね」
務めていつものように笑みを見せて言った。すると珍しいことに表情のほとんどないきらが片眉を上げて僕へと尋ねる。
「……いいのか?」
僕は心配されるほど笑顔を作れていなかったのだろうか。単にきらとの付き合いが長いせいかもしれないけれど。
「続けられるなら偽りの関係も悪くない。でも、続けられないなら仕方ないよね」
本心をそのまま口に出す。
敵であるまゆを心配する気持ちと邪魔をするなら排除するという気持ちはなぜか崩れることなく僕の中ではバランスが取れている。
だから、出来るだけやって駄目だったらそれまで。
僕にとっては……研究のほうが大事だから。
「さあ、行こう。きら」
軽く頷き返したのを見て僕は玄関へと歩き出す。僕たちがやることをきいたらまゆはきっと止めるんだろうな、と思いながら。
Fine.