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2010.10.9 【導】
Novel Stage / Fun Fiction:DFF
《見えない導》
さて、ここはどこだろう。胸中で呟きながら、彼は周囲を見回した。
空を見上げれば濃紺の帷の中に星が煌いている。街で止まることの少なかった彼にしてみれば、野宿というのはいつものこと。星の位置から方向を読み取るのも慣れていた。
だが、今は出来なかった。
闇の中に浮かぶ真円が、二つ。
どう見ても月にしか見えない双子の輝く円がその存在を主張していた。
旅を続けていた彼にしても、月が二つある事態には遭遇したことがない。また夜空の星の輝きにしても配置にはまったく見覚えがなかった。
周囲にあるのはこれといって特徴のない乾いた台地。大きな段がいくつも重なっている部分もあり、高低差が顕著だった。
この台地もまた、長く旅をしていた彼にとっては初めての場所だった。
見慣れない場所に見慣れない空。
それでも彼が思うのは不安でも恐怖でもない。
先には何があるんだろう。
未知への好奇心が、全てを上回っていた。
元々旅暮らしだった彼にとって、全てがわからない状態は楽しく、わくわくする瞬間なのだ。
持っていた剣を地面へ垂直に立てると手を離す。剣は彼が今見ている方向へと倒れた。
行き先を確認してひとつ頷く。
彼は剣を拾うと、指し示した方向へと歩き出した。
さあ、進もう。
明日は明日の風が吹くのだから、風が導になってくれる。
あてどもなくとも、進めばどこかへは辿り着くさ。
Fine.