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2010.10.13 【参】
Novel Stage / Fun Fiction:Fire Emblem 聖戦の系譜
《北の国へ想いをはせて》 Seti(Bragi)*Arthur(Seti)
山間に聳える、古いがしっかりとした造りの城。いや、砦と言うべきだろうか。
装飾にはかけているものの補って余りあるその実用性は、彼ら、光の戦士の軍にとっては喜ぶべきものだった。
「眠れないのか、アーサー」
本来なら見張りが立つ城の最上部に立つ少年へ階段を上って来た少年が声をかけた。
険しい山が立ち並ぶ地形の為、吹き抜ける風も冷たく痛みさえ覚えるような風。ひゅうと一度吹けば、櫓に立つ少年達のラベンダーとフォレストグリーンの髪を揺らした。
「眠れないというか、慣れた感覚と言うかな」
肩口より少し長い髪をあえて風に晒す。
「シレジアも風が冷たかっただろ? もちろんここよりもっと寒いけど、少し前までの砂漠が暑くてさ」
外套だけ軽く羽織っただけの少年は気持ちよさそうに夜風を浴びていた。
その頭にばさりと毛布がかけられた。
「いくら寒いのに強くても、夜風は体を冷やす」
緑の髪の少年は苦笑しながら言うものの、目の前に立つ少年を諌めたりはしなかった。そのまま数歩歩くと隣に並ぶ。
「ん、さんきゅ。セティ」
「明日は更に南下していく。そろそろ寝た方がいい」
「そうだな……」
言いながらも彼は動かない。視線の先にあるのは闇夜に一際強く輝く星。
北を示す何よりも確かな煌き。
ぼんやりと空を眺めながら、しばし沈黙が降り積もる。
「なあ、セティ」
口を開いたのは毛布に包まったアーサーだった。
「お前が継がないか。国」
「……は?」
あまりの唐突な発言にセティは隣に立つ友人の顔を見る。そのエバーグリーンの瞳はまだどこか遠くを見ているようだった。
「お前の方が政治とか詳しいし、子供達を助けた勇者様だ。人当たりもいいし、さ」
どこまで本気かわからないその様子を少年は黙って見守った。
彼は心の中をそのまま吐露しているのか、表情はぼんやりとしたまま動かないが言葉は止まらない。
「正直、今の旅してる状態結構気に入ってるんだ。不謹慎だけど、もっといろんなとこをゆっくり回ってみたい」
そこまで言葉を紡ぐと、冗談を含んだ薄い笑みを浮かべる。
「そう言ったら、どうする?」
アーサーは隣に立つ少年の表情を伺う。
その視線を真っ直ぐに受け止めたセティは。
「そうだね……」
怖いくらい真剣な表情をしていた。
思いがけない反応に紫髪の少年は少したじろぐ。反射的に下がりかけるアーサーの腕をセティが軽く捉えた。
「君が本当にシレジアを投げ出したいなら、私に受け止める覚悟はあるよ」
「セ、ティ」
「けど……君だけを旅に出すのは、私には受け入れられない」
セティは捉えている手を引き寄せる。特に抵抗するつもりもなかった少年は毛布ごと彼の腕の中へ収まった。
「ちょ、ちょっとセティ?」
抱え込まれたところで我に返ったアーサーが顔を上げる。どこまでも真っ直ぐな金色の瞳とかち合った。
「王である責務がないというのなら、私が君を閉じ込める。ずっと私の側に拘束して、誰にも見せない。外にも出さない」
紫髪の少年は突き刺さるような視線から逃れられない。
息を呑む友人を真っ直ぐ見ると、にこっと笑ってみせた。
「そう言ったらどうするのかな?」
「……降参」
解けた緊張に大きく息を吐きながらアーサーは両手を挙げる。思わず力が抜けて落ちかける毛布をセティが受け止めた。
「心臓に悪いぜ、セティ……」
「最初に言い出したのは君だよ、アーサー」
ふらついた少年へセティが苦笑した。アーサーもまた苦笑いを返すと、きちんと立ち上がって踵を返した。
「いい加減戻ろうか。今なら寝られそうな気がする」
「それはなにより」
後をついていきながらセティは心の中で呟いた。
(……結構、本気だったけれどね)
Fine.