[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
2010.10.8 【古】
Novel Stage / original:Willwart
《変わらないもの》
最近、また黒翼の青年が現れない。
空中都市にしか咲かない薄紫色の花畑の庭園。
どこまでも広がる雲と見紛う花弁に埋もれるベンチで、白翼族の少女はゆっくり足をぶらつかせていた。
友達がいないわけではない。
けれど、やはり友人や兄達とは違う存在と言う意識がある。
幼心にも、いや、幼心だからこそ素直に受け入れる大切な存在。
『……寂しい?』
心の奥底。ひとつとなった宝石が話しかけてくる声が聞こえる。
日常生活においてほとんど意識したことのない石の声は、少女が青年と遊ばなくなってぼんやりすることが多くなってから響くようになっていった。
「……うん。さびしい」
他の人にはなかなか話しにくいことでも、ひとつとなっている"彼女"になら抵抗は少なく話すことが出来たのだ。
「おしごと、いそがしいみたいだけど……あいたい」
俯いて呟く白翼族の少女。翠玉の瞳は微かに涙を帯びていた。
『……大切な人に会いたい願いは、古の刻から変わらないものね』
柔らかな女性の響きが少女を包む。
『待つ身は辛いわ。でも、この時があるからこそ、会った時の喜びはひとしおなの』
涙の溢れそうなパールが小さく頷く。頭が振られる度に、小さな水の雫が零れ落ちた。
「だいじょうぶ。パールはちゃんとまってる」
顔を上げた少女は目の端に残った透明な玉を拭うと、いつも通りに微笑んでみせる。
『いいのよ、笑わなくて。寂しい時は寂しいと言えばいいの』
ふわりと少女を包んでいた気配が薄れる。優しく柔らかな雰囲気だけを残して。
『私も、そうだったのだから……』
重なる二人の乙女の願いは花畑を撫でる風がさらっていった。
Fine.