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2010.1.9 【人】
Novel Stage / original:Abyss of Time
《すとらいき》
現在、僕は『久遠の薔薇』の所長室の前にいた。
こんこん、と扉をノックする。
「はい」
中から男性の声で返事があった。
「失礼します」
僕は扉を開けて、正面に座っている金髪の男性にぺこりと一礼。そして紫さんから渡された拡声器を構えて、同じく渡されたメモを読み上げる。
「あーあー。私はー待遇のー改善をー人事に要求するー」
すると立っていた若い男性は呆然としたままだが、座っていた初老の男性が苦笑しながら立ち上がり、僕の側に立った。
「えーっとすずな君だったかな。紫さんのところの子だね」
「はい」
拡声器を口の前から避けて答えた。
「まだ続きがあるので読み上げてもよろしいでしょうか」
「どうぞ。彼に向かって言ってくれるかな?」
「わかりました」
示された通り、若い男性の方に向かって拡声器を構えると、僕はメモの続きを読んだ。
「必要のない出張ー休日出勤はー直ちにーやめろー」
「そーだそーだー」
「研究費とー時間をーよこせー」
「まったくだー」
側にいる男性が拡声器の文句にあわせて囃し立てる。
ぽかん、としていた若い男性は我に返ったのか、無言のまますたすたとこちらに歩いてくると、ひょい、と初老の男性を摘まんで彼が元々座っていた椅子の上に置いた。
そして再び僕の側に戻り、満面の笑みで尋ねてきた。
「紫さんのいいたいことはわかりました。メモはそれで終わりですね」
「はい」
「ご苦労様でした。所長は忙しいのでもういいですか?」
笑顔のはずなのに、僕は妙な圧力を感じた。
「はい」
ぺこり、と一礼して、僕は部屋、所長室から立ち去った。
「おぉすずな。どうだった?」
「いいたいことはわかった、とおっしゃっていました」
「……環の野郎か。絶対にわかってないな」
紫さんは舌打ちをした。
Fine.