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2010.1.6 【朝】
Novel stage / original:Absoetia
《小鳥の子守唄》
士官学校の新学期が始まって、もう3ヶ月ほどたった日の朝。
ラートは校舎の廊下を第二図書室に向かって歩いていた。
この学校には二つの図書室がある。一つの建物丸ごとが図書室となっている第一図書室と旧校舎の塔の三階にある専門書中心の第二図書室。
彼が手に持っているのは今日の授業に必要な法学の教科書と筆記用具。
静かな朝の空気。
「……?」
靴音だけが響く中で他の生徒とすれ違うこともなく第二図書室の前に立ったラートは、扉の鍵が開いていることに気付いた。
普段は教職員でも来る事が少ないために、ここの扉は鍵が掛かっている。実際にラートも、使うために前日のうちに鍵を預かっていた。
ゆっくりと音を立てないように扉が開かれる。
数少ない窓から差し込む朝日が室内に僅かな明かりをもたらしていた。
ラートが足音を殺して本棚の間を抜けていくと、長机の長辺の真ん中に古い装丁の本が数冊積み上げられていた。
タイトルは全て法学に関係するもの。
更に彼が近付くと、見えてきたのは白く長い髪。そう、どう見てもラートの級友であった。
「キルシェ」
声をかけてみるが目覚める気配はない。
よほど深い眠りについているのか、動きすらしないのだ。
ラートはしばし考えた結果、キルシェの向かい側に座り集められた資料を読み始める。
本のページをめくる音だけが響いていた。
それから少し経って、小鳥達の鳴く声が近付いてきた。
「……ん」
ラートの前の人影が小さく身動ぎする。ただ、完全に起きる所までは至らないのか、軽く頭をもたげてぼんやりとしている。
「まだ早い」
ラートはそっと声をかけた。
すると普段なら覚醒するであろうキルシェは、そのまますぅ、と眠りにつく。小鳥達の声を聞きながら。
再び級友の寝息が聞こえてくるのを待って、彼は本のページをめくり始める。
Fine.