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2010.1.7 【覇】
Novel Stage / original:Absoetia
《始まりの物語》
男は悩んでいた。
不当な圧政に耐えかね、彼は同胞と共に反旗を翻した。
彼のいる小さな村は役人の数も少なく、不意をついた作戦はうまくいったのだった。
噂を聞きつけた同志の数は次第に増加し、士気も上がっている。
だが、王国が本格的に反乱を潰そうと思えば、こんな数などあっという間にけちらされてしまう。
無為に同胞を死なせるくらいなら、交渉を始める必要もあるのではないか。例えその為に男自身の命を差し出すことになったとしても。
そう、考えていた。
「それにしても、眩しいな」
彼がいるのは小高い丘の上。
確かに平地よりは太陽が近いがここまで目が痛くはならないはず、男は空を見上げた。
すると。
ふわり、と白い羽根が舞い降りた。
「……何だ……!?」
咄嗟に羽根を手に取った男が空を見回す。
鳥の姿などどこにも見えない。だが、空から舞い散る羽根の枚数は増えていく。
ひらり。ひらり。
男の周りに落ちる羽根が地面と男の間に境目を作る頃になって漸く発生源が見えた。
それは、背に大きな白い翼を負う少女。
「人、なのか……」
ゆっくりと、しかし、真っ直ぐ落ちてくる娘の手を男は取った。
金色の髪が風に吹かれて僅かにたなびく。
そして、少しずつその瞳があらわになった。虹彩は鮮やかな赤。
「……はじめまして」
「あ、ああ」
「ここはどこかしら」
少女はきょろきょろと周囲を見回す。とても楽しそうに。
その無邪気な様子に男は呆然としていた。
「綺麗なところだわ。ねぇ、ここは何という場所なの?」
興味津々な少女に尋ねられて、漸く我に返る。
「君が誰だかは知らないが、早くここから去ったほうがいい。
ここは……戦場になるかもしれない」
「戦い?」
男が厳しい口調で言うと、少女は首を傾げた。
「そうだ。俺たちは自分が生きる為に反乱を起こしたが、力の差は歴然だ。
ここにいたら、君も死ぬかもしれない」
「どうして? 生きる為にしたことがどうしていけないことなの?」
問いはどこまでも純粋なもの。詰問するのではなく単純な疑問。
「……国にとっては、面白くないことだからだ」
男は苦々しく言った。握り締めた掌に爪が食い込む。
「そんなのおかしいわ」
少女は先程とは逆に男の手を取った。堅く握る指を解く。
「だが」
「命は大切なものよ。それをないがしろにするなんておかしい」
輝いた瞳が真剣に彼の目を見つめる。
「私が力を貸してあげる。私は頼りになるわよ」
あまりの真剣さにおされ、男は驚きながら呟くように言った。
「……君は、何者なんだ」
尋ねられた彼女はにっこり笑った。
「イントゥルヌス。白翼族の一人よ」
この出会いが、今のアブソエティア国を作り上げた。
Fine.