『俺の親愛なる人たちへ。
そっちは相当寒くなってる季節だと思う。皆、体調を崩したりしてないか?
気候については言えないけど、俺は元気に旅を続けてるよ。心配要らない。
急にいなくなったのは悪かったと思うけど、やっぱ、駄目だった。
俺自身の気質なのか、吟遊詩人の血なのか、風の血のせいなのかそれはわからないけど。
じっとひとところに留まってるのはどうしても耐えられなかった。
心配かけてたら、ごめん。
でも、俺がこうして安心して離れられるのはお前を信じてるからだ。
離れたかったわけじゃない。信じて預けられるだけの相手だってことなんだ。
いつか、大陸を一通り回って俺が納得したら絶対戻るから。
約束する。
それじゃ短いけど。またな。
くれぐれも体には気をつけろよ。
P.S. 心配されてたらちょっと嬉しいって思う俺を許してくれ。 』
メモのような紙に、急いで書き込んだらしい荒い文字列。
震える手がたった一枚の紙片を握りつぶそうとして、止まる。
妹も、彼の妹も、この国の人々も、いなくなってしまった彼に対して憎まれ事の一言も出さない。それだけ皆は彼を待っているのだ。
そして自分もまた、彼を恨みきれないのだ。
勝手にいなくなって全部押し付けていったのに、それも彼らしいと考えてしまう。
もちろん探す手を緩めることはしない。
でも手紙をよこす程度には気にかかっているのなら。
それはそれで、嬉しい。
Fine.