[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
2010.10.27 【単】
Novel stage / original:Abyss of Time ~ After the Nightmare ~
《謎の機能》
「そういえば」
いつものように警視庁の一室で書類仕事をやっていたときのことだった。
ちょうど山が一つ片付き、僕が暇そうに書き損じやミスプリントの用紙を折り紙して遊んでいたせいだろうか。珍しく和が声をかけてきた。
「皐月さんが、お前にはいろいろ便利な機能があるから必要なら使ってくれ、と言っていたんだが、何のことだ?」
片手間にインスタントコーヒーを入れつつ尋ねたということは、とりあえず休憩する事にしたらしい。
仕事の邪魔はしたくないが、休憩中に話している分には問題なさそうだ。
僕は軽く頷いて答える。
「紫さんの完全趣味な機能がいくつかあるんだ」
例えば……と言いつつ、僕は和の机の引き出しから携帯の充電器を取り出す。中に入っている単三電池は、同僚から貰ったという充電型の電池。
入っていた二本の電池を抜くと、左の掌の上に乗せる。
「そんなものどうするんだ?」
「まあ見てて。あ、でも近付かないでね」
不思議がる和の前で僕は充電器を机の上に戻し、机からも和からも距離を取る。
二本の電池を軽く握ると意識を集中させた。イメージは掌の中へ向かって手首から弾を打ち出す感覚。
ばぢぃっ!
一瞬だけ手の中で弾けた稲光。和の目が大きく見張られた。
直ぐ近付いてくるのを右手で静止し、軽く左手を振って熱を放出する。
なんとか室温より少し熱くなったくらいまで冷ましたところで僕から近付いて電池を渡した。
「多分、充電完了したよ」
「……便利な機能ってこれか?」
「のひとつ。充電池の充電機能」
和は、非常にがっかりしたようなあきれたような表情をしていた。おそらく僕も期待して見せられたのがこれだったら同じような表情をしたと思う。
だから僕が返せる表情も苦笑だけだ。
「紫さんはさ、こういう戦闘に関係ない機能がだーいすきなんだ」
のんびりとソファで大きくのびをしながら言った。
「僕がただの戦闘機械じゃないって、自覚できるから」
だから僕は僕自身が把握できない機能を増やされても文句を言えないし、言いたくない。
僕も戦うだけの存在では在りたくない。
あの人の存在が在る限り、戦いをやめるつもりはないけれど。
「……そうか」
和はため息をひとつついた。けれど、表情はなんだか安堵したようにも見える。
和も、紫さんと同じ気持ちだったのかな。
Fine.