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2010.10.23 【幻】
Novel Stage / Fun Fiction:ととモノ。
《兄妹の記憶》
それは遠い日の幻影。
楓の葉が赤く染まる日にはある光景がふと瞼を過ぎる。
懸命に伸ばした小さな手と手。大人達に対の手を引かれ届かなかった苦しい思い出。
その間をもう絆はないのだよというように、紅い、紅い、てのひらの形をした葉が何枚も横切っていく。
決して子供では狭められない間隙が、悲しかった。
それでも必死に手を伸ばしたのは、指先の向こうに見える妹もまた泣きながら手を伸ばしていたからだ。
両親が共に仕事が忙しく家に寄り付かなかったこと、そして両親の不仲を感じ取ったこともあり、子供達は比較的早いうちに精神的な親への依存を捨てた。
大切なのは妹にとっては兄、兄にとっては妹という家族。
けれど、彼らは幸せだった。
彼らの狭い領域は閉じられた包みであってもそれで十分だったのだ。
そんなささやかな幸せは状況を作った両親達によって壊されたのだが。
晴れ晴れとした秋空なのに思わず溜息をつく。すると、タイミングがいいのか悪いのか丁度教室へ入ってきたラッセンがばたばたと駆けて来ると何を考えたのか右手にしがみついてきた。
「……俺、ナニカしたか?」
まったくの勘違いにも関わらず真剣な表情で聞いてくるディアボロス。普段はうっとおしがられてることも気にせず絡んでくるくせに、こんな時だけ真面目に相対してくる。
何かを知っている訳でもないのにこの対応の差。
思わず笑みがこみ上げてきた。
「いいえ」
強張った顔が目に見えて安堵した表情になる。
「あーびっくりしたー……」
「自覚があるなら少し控えればよろしいのに」
「控えめで大人しくて素直な俺なんて俺じゃないだろ」
胸を張って答える姿に苦笑しか返せなくなる。けれど、この気安さに少し気が楽になるのも事実だった。
今は何事もなく妹とも再会したが悲しみは忘れられない。忘れないことで強くなった自分もいる。
だからこうして悲しみに落ちきらないでいられるのなら、偶に思い出すのも悪くない。
Fine.