since 2010.1.1/1日1題に挑戦終了。現在不定期更新。
〓 Admin 〓
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
小説と言うより正しくは設定を文章化してみた、という感じですが。
久しぶりのSSです。
《Yours Ever》(1/2)
Novel Stage/TRPG:アリアンロッドRPG 2E
久しぶりのSSです。
《Yours Ever》(1/2)
Novel Stage/TRPG:アリアンロッドRPG 2E
巨大な卵状の機械が立ち並ぶ石造りの神殿の一室。ほんのりと光る魔法の灯りだけが埃ひとつない表面を白く照らしている。
そのうちのひとつ、一番奥に設置されたNo.1の番号を持つ卵に触れ、上部の開閉装置を操作する。
[2nd Garden No.1 Rufael]
無機質な音声をかき消して上部1/3ほどを占めていた蓋が開く。
ふわり。
中から出てきたのは、背の白い翼を広げる青年。外見は10代後半、金髪、白い肌にローブを纏い、澄んだ青い目がじっと私を見る。
「おはよう、ルファエル」
挨拶に彼はひとつ頷く。言葉はない。
「駄目よ。きちんと口に出して」
彼らは独自のネットワークを構築していて、話す必要がほとんどないことに最近気付いた。けれど、それではこれから困るのだ。
「おはよう、ございます」
戸惑いながら、彼――ルファエルは挨拶を言葉にした。
「いい? ルファエル」
彼の手を引いて部屋の外へ歩きながら、周囲の気配を窺う。幸い、機械の中で眠るもの達を除いて他に誰かがいる様子はない。
「今日は少し変わったことをするわよ」
言いながら、思い浮かぶのは上司から渡された数枚の紙片。
『天使の因子発現における閾値の研究』と題されたそれには、自分たちが創った『天使』に含まれる因子が何を原因として発現するのか、逆に何があると発現しないのかを確かめるために『天使』の一部に対して様々な実験を行う予定が書かれていた。中には、とても口には出したくないおぞましい内容の実験まで含まれている。
『天使』たちは刷り込まれた使命を何も疑わず、ただ、主たる神の御使いとしてやがて神界へと至ることだけを望んでいる無垢な存在だというのに。ある者は研究道具として彼らへ拷問にも等しい仕打ちを平然と行い、ある者は彼らを政治道具としての価値しか見出していない。
どちらがより自然の摂理に反しているというのだろうか。
「あ……ごめんなさいね」
思考の渦から戻ると足が進んでいない。それにかなり強く手を握っていたのか、ルファエルの繋いでいた手はうっすら赤みを帯びていた。
彼は不思議そうな表情で私を見ると、ふるふると首を横に振った。大丈夫、ということだろうか。
「次があったら言葉に出して注意してね」
今度は首が縦に振られる。
「ちゃんと、言葉で」
「はい」
素直な返事が聞こえた。
「よろしい」
再び彼の手を引いて歩き出す。
きっと、こうしてルファエルを連れ出すことはもうないのだろう。
『天使』、それも名前を与えられる『大天使』にもなると個性の強いものが多い中で、彼は異質なくらい個性が薄い。それだけ使命に忠実になれるということでもある。
だからこそ、上司たちは彼を最初の犠牲者として選んだ。一番抵抗がなく、もしもの時、使命を優先するあまり、従えることも、自滅させることもできなくなる可能性があるから。
「さあ、ついたわ」
ルファエルを連れてきたのは、神殿の一室。中にあるのは荷物を入れるときなどに使う大きな木箱がいくつかと、中身があるものないもの合わせて袋が十数枚。
私は、その中でも特別製の木箱の蓋を開けた。内側からは決して開かず、外側からも正しい開閉方法以外では開けられない。木箱がいくら揺れても壊れることはなく、光は中に射さないが、息ができなくなることもない。
つまり、一度閉じ込められれば出られず、暗闇の中で自殺以外に死ぬこともできない。
僅かに躊躇った。だが、大きくひとつ息をついて、私はルファエルに告げた。
「中に入って」
彼は少し首を傾げ、軽く翼で浮かび上がると箱に入る。膝を抱え、翼も出来る限りたたむとぎりぎりだが蓋は閉まりそうだ。
「……いい? これから蓋を閉めるわ。次に名前を呼ばれるまで、出来るだけ眠っていなさい」
こくり、と頷く頭。
「これはお守り。持っていて」
私は封筒を彼に渡す。伸ばされた手が封筒を受け取り、両手で抱える。
ルファエルは自分がこれからどうなるかわかっていないだろう。けれど、未知を恐れることなく、ただ私の目をじっと見ている。
本当、『天使』はどこまで真っ直ぐなのか。
ぼんやりと視界が滲み始め、私は視線を遮るように木箱の蓋を閉めて鍵をかけた。
中からはもう物音も聞こえない。もし何か音がしていたとしても、この特別製の木箱では外側まで音は届かない。
「……ごめんね……」
誰も見ていない。そう思うと涙を止めることはできなかった。私にはもう祈ることしか出来ないのだ。
――次に箱が開けられる時まで、ルファエルが無事でいてくれますように――
to be continued...
PR
この記事にコメントする